約 2,288,108 件
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/2845.html
「何であんたはメールの返事出すのに4時間もかかるの?信じらんない。」 「だから、晩飯食べた後に寝ることなんてお前もあるだろう」 「はぁ?電話の音もわからないくらいの超熟睡をソファーでできるの。あんたは」 「着信34件はもはや悪質の域だぞ。出る気も失せるのはわかってくれ」 「わからないわよ!あんたあたしがテストでいつもより悪い点とって落ち込んでるの知ってたでしょう!?」 「知らん。俺から見りゃ十分すぎる成績じゃないか。むしろもっと点数寄こせ」 「何よその言い方!あたしの貴重な時間を割いてキョンの勉強見てあげたのにあんた平均点にも到達してなかったじゃない。 やったとこと同じ問題が出たってのに、そっちこそ悪質よ。名誉毀損!!」 「俺は見てくれなんて頼んでない。お前が理由つけて俺の家に押しかけただけだろうが」 「何それ!最ッ低!!」 こんなやりとりがずっと続いた。 朝、HR前の時間。ハルヒとのたわいもない話をする時間が、 または恋人としての少し甘酸っぱいやりとりをする時間だったのが、些細なきっかけでこんな状態になってしまった。 俺はこんなやりとりをしたくない。でも、このときの俺はどうやら言葉を返すのに全力を尽くしていたらしい。 言葉でハルヒに勝とうなんて思っても無駄なのにな。 この頃になるとクラスメイトは俺たちが付き合っていることなど常識になっていた。 が、やっぱりこんな状態だと、気にかける目を向けてくる奴が結構いる。 谷口を見てみろ。古泉のニヤケ面と俺のやれやれをくっつけたような顔になってやがる。 それを伝えようとしても、伝える相手は一切こっちを見ようとしない。 担任が入ってきたおかげでひとまず救われたが、俺たちはもちろんのこと、クラス全体がしんみりした空気になってしまった。 そもそも俺たちがこういう関係になったのは半年以上も前だが、この関係はバレバレだった。 教室でいちゃついたり、付き合っていると言ったことは一度も無いのに不思議なもんだ。 休み時間も昼休みも、ハルヒは教室にいなかった。当然だろう。 早いものでもうすぐ6限が終わる。こんな状態で部室に行けるわけが無い。 冷静になって考え直してみると、やっぱり俺が謝らなきゃいけないんだろうな。 どっちが悪いとかそういう問題じゃない。こういう時は男が先に謝るものだからな。 それに善意で俺の勉強を見てくれているハルヒに対してあれは言いすぎだ。 とにかくはやくハルヒと話がしたかった。 頼む。頼むから部室で待っててくれよ。ハルヒ。 待っててくれと思うのは俺が掃除当番だからであり、掃除中は気が気じゃなかった。 そんな俺に寄ってくる影がひとつ。やっぱり谷口か。 「ようよう。この後は結局どうすんだ?」 「習慣通り団活に出るさ。何度も言うがお前は心配してくれなくてもいい。」 「涼宮と別れることになったらそのときは付き合ってやるぜ?」 「誤解されるような言い方はやめろ。それに俺はハルヒと別れたりはしない。」 「だろうな。明日までには教室の空気を軽くしろよな。ったくお前らはよー・・」 谷口の適当な愚痴を聞きながら掃除を終わらせ、俺は部室に向かった。 足が重い。 筋肉のつかない筋トレをしている気分だ。 そうしてやっと旧館に足を踏み入れて少し歩いたところで、俺は天使に出会った。 いやいやいつ見ても本当に天使のようなお方だ。 「朝比奈さん。」 朝比奈さんは水を汲みに行く途中のようで、メイド服を着てヤカンを手にしている。 俺の姿を見るやいな早足でこっちに向かってきた。どうやら俺に言いたいことがあるらしい。 なるほど。ハルヒからの伝言か・・・と思ったらそうではないらしい。 「わたしがあなたにどうしても言いたかったんです。」 なるほど。ヤカンは部室を出る口実ということですね。 「あなたと涼宮さんの事で・・・。」 「ああ、やっぱり今日は部室に行かない方がいいということですか。」 「違うの。その逆。涼宮さんすっかり落ち込んじゃって、どうしたらいいかずっとわたしと相談してたの。 だからあなたに安心してほしくて・・。あ、もちろんこの話は内緒ですよ。」 聞けばハルヒは最初は俺の愚痴を言っていたらしいが徐々に不安を口にしたらしい。 朝比奈さんの話に俺は頷くしかなかった。 ハルヒの奴・・・ 教室ではそんな様子は全然無かったのにな。 俺の前で沈んだ表情を見せないのは意地か。まぁ俺も他人のこと言えないんだけどな・・ 朝比奈さんの話によると長門と古泉は一緒に図書室で待機しているらしい。 「キョン君。がんばって。」 そんなに大袈裟な事なのかね。これ。 コンコン 部室のドアをとりあえずノックしてみる。返事は無い。 恐る恐るドアを開ける。いつもの席にハルヒがいた。 パソコンが見事に顔を隠してくれている。 俺はドアを閉め、意味は無いと思うが鍵も閉めた。 とりあえず口を開こうかと思った。 「キョン。ちょっとこっち来なさい」 が、ハルヒのこの一言によって拒まれる。何を言おうというのだ。 被害妄想が頭を駆け抜けたが、ハルヒはパソコンの画面に興味を示してるようだった。 よく見たらハルヒの奴はいつもと同じ表情 ・・に見えるが少し無理してやがる。 長門の表情すら読める俺が気づかないとでも思ったのか。 こいつはほんとにもう・・・ 「これ見て。なかなか面白そうだと思わない?今度の土曜日にどう?SOS団で!」 面白いぜ。ハルヒ。お前のその人間臭さというかなんというかそんなものがな。 俺がパソコンの画面をあまり見てないことなんてお前はわかってるんだろう。 そうやってハルヒがしゃべって、俺がうなづいているだけで5分経過。 そろそろ言おうとしたことを言わせてもらおうか。 画面を指差すハルヒの手を握る。 ハルヒはほんのわずかビクっとしてこっちに不可解な視線を送って、「何?」と呟いた。 その表情から不安を感じ取る。表情は素直なんだな。不覚にも可愛いと思ってしまうじゃないか。 「あー・・。朝は ごめん な。」 改めて考えると色々と恥ずかしい。顔よ頼むから赤くならないでくれ。 「・・・」 「あんなことを言うつもりは全然無かったんだ。」 「・・・」 「勉強だってハルヒに見てもらうの、いつも楽しみにしてるから。」 「・・・」 「俺いつも自分のことばっかりで・・だから・・・。」 「フフッ・・アハハハッ」 ハルヒは急に笑い始めた。おかげで赤面がさらに赤面した。 そしてなんともいえない安堵感も広がった。 もしかしてこう言い出すのをわかっていたとか・・・もうどうでもいいか。 「アンタにそんな真面目な顔は似合わないわよ!」 もう結果オーライだ。 ハルヒがまた俺の前でこうやって笑ってくれるだけで良い。そういうことだ。 いつぞやの時よりは溜息が少なくなりそうだ。 少ししたら空気を察した古泉長門朝比奈さんが入ってきた。 朝比奈さんはウィンクをしてくれた。ありがたいのですがまさか聞いてないですよね。 古泉のニヤケ顔が素に見えるのも気のせいですよね。 活動終了後、俺はハルヒと帰り道を共にする。 「ハルヒ」 「何よ」 「俺の勉強、また近いうち見に来てくれないか。」 「言われるまでもないわよ。あたしが見ないで誰があんたの面倒見るのよ」 「じゃあ来週の土曜日、でどうだ。 ・・・泊まりで。」 「い・・・えっ!?でもあんたの」 「家族が旅行なんだ。寂しいから、な。」 やっぱりちょっと厳しいかな、と思ったが返事はすぐに返ってきた。 「もうほんとにしょうがないわね。一晩かけてじっくり教え込んでやるわ。特に数学!わかった!?」 「ああ。」 細かい予定を話し合っているうちにもうハルヒの家に着いてしまった。 遠回りすればよかったな。どうせ同じか。 「じゃあねキョン。明日寝坊すんじゃないわよっ。」 「待ってくれハルヒ。」 「今度は何?」 「キスしたい」 「はっ?・・・ んっ!?」 ダメだな俺。相手の返事ぐらい待った方がいいぞ。 ハルヒは逃げやしないんだからそんなに必死に味合わなくてもいいじゃないか。 俺は数秒で済ませておくことにした。やっぱり恥ずかしいしな。うん。 「・・ったく・・・キョン・・・」 「何だ。」 ネクタイを掴まれた。 「あの・・今日は・・あたしも・・・悪かった・・わよ。」 「なんて言った?」 実は聞こえてたけどわざと聞いてみた。 「はん。その手には乗らないわよ。」 「だめだったか・・・ってぅおっ!?」 ネクタイを引っ張られ、そのまま俺はまた目をつぶる羽目になる。 珍しいな。ハルヒがあんな謝り方するなんて。 珍しいな、ハルヒからのキスなんて。 もっしかして本当はずっと言おうとしてたんじゃないか? 最後の最後まで我慢してたんだろう。ほんとに頑なな団長さんだな。 俺たちはしばらくお互いを貪るのに夢中になった。 多分最長記録だろう。 俺がそうなるようにしたんだからな。 後にハルヒは呟いた 「舌入れるんじゃないわよエロキョン。」 ・・・さて。 朝日が漏れる部屋に寝っころがってる俺は天井に向かって悩ましげな視線を送る。 4日目だな。もう慣れた頃合だ。 時間が随分飛んだな。1~3日目は少なくとも半年以内にまとめられるが、今日はいきなり半年以上も飛んだ。 考えても意味は無いが、もしハルヒが俺との思い出を見せているのなら、昨日の夢の日と今日夢の日との間に何も無かったのはおかしい。 ハルヒと気持ちを確認してから、この喧嘩をする日までだって沢山の思い出がある。 デートと呼ばれる事だって何度もしたし、ハルヒの手作り弁当だって食った。初めて手を繋いだ日だってわりと覚えている。 キス・・・だって少ないが何回かした。この喧嘩した日まで軽いのだけしか・・ってなんか自分で恥ずかしくなってきたぞ。 次に見るとしたらそうだな。もしかしたら、あの泊りがけの勉強会かもしれない。 って何考えてるんだ俺は。ハルヒがもしかしたら俺に何かして欲しいのかもしれんのだぞ。 ちょっと早いがダイニングに向かう。 ハルヒも起きたばかりのようだった。 「あら?あんた早いわね。丁度いいわ、たまにはご飯作りなさいよ。」 「ああ。」 どうしても夢の中のハルヒと重ねて見てしまう。 そういえば最近あの頃みたいにデートとかしてないな。 俺は仕事で忙しいし、その事に対してハルヒは「しょうがないでしょ。さっさと昇進しなさい」と、素で言う。 これは間違いない。あと空いた日があっても、運悪くハルヒが体調を崩したりしてたな。 朝飯の準備をしながら、俺はとりあえずハルヒに少し聞いてみようと決めた。 「キョン。これちょっと油っぽいわよ」 「そうか?」 「ったくあんたは料理上手くならないわね。」 「悪かったな。それとお前のが上手すぎるんだ。」 「そう。誉めても何も出ないわよ」 素っ気無い態度だな。ハルヒらしいといえばそうなんだが・・・。 なんというか・・・もっともっと笑って会話がしたいものだ。 そんなわけでそろそろ本題に入るか。 「ハルヒ」 「何?」 「どうだ?今度の日曜、出かけないか。」 「あんた、昇進試験が近いんでしょう?そんなこと言ってる場合じゃないんじゃないの。」 痛いところを突かれた。時間を止めて言うことを整理できればいいんだがな。 まっすぐに俺の目を見て心配そうに言っているからにはハルヒは面倒くさいわけでは無さそうだ。 これは本音だろう。 「でも、たまにはお前とゆっくり過ごしたい。お前だって・・」 「あのね、あんたは変なところで優しすぎるのよ。 試験が終わって仕事がちょっと落ち着いたら散歩でも旅行でも行けばいいの。それに・・・。」 「どうした?」 「・・ちょっと気分悪い。最近風邪気味なのよ。」 風邪気味だって? 声も枯れてない、鼻水も咳も出てない、だるそうにも見えない。 慌てておでこをくっつけてみる。 ・・・熱も無い。 でもハルヒが言うからにはそうなのだろうな。 「・・だから最近体調がおかしいって言ったでしょ。」 「そうか・・・俺にできることは何かあったら・・」 「それはそうとあんた時間そろそろやばいんじゃない」 「うぉ!?いけねっ」 時間の野郎、いつのまに進んでやがった。 これじゃハルヒと満足に会話もできない。 でも少ないが収穫はあった。 ハルヒが「今週末は○○に行くわよ!」と引っ張っていかないのは俺の仕事事情を心配してるから。 そしてハルヒの体調がおかしいということだ。今まで普通に見えたのになんてこったい。 明日にでも古泉に電話しよう。ちょっとは解決に役立つかもしれん。 俺が鞄を持って玄関を飛び出す。 ハルヒはしっかり玄関で「いってらっしゃい」と言ってくれた。 素っ気無いと思いきや、ちゃんと出迎えてくれるところがハルヒらしいかもな。 俺はその夜早く眠りについた。 早めに寝ておいたほうが良いと判断したからな。 「ほら、ここ違う!」 「そこは暗算でやっちゃだめ!」 「まさかこの公式忘れたんじゃないわよね」 ハルヒのスパルタ教育は留まるところを知らない。 土曜日。夜。家族は旅行。一応彼女と2人きり。 ・・・見事な337拍子だな。 こんな用意されたようなシチュエーション二度とないだろう。 ・・・・そんなことを一瞬でも考えたら負けかもしれん。 ってほどハルヒは密度の濃い家庭教師に徹していた。 早めに晩飯を済ませて俺の部屋に閉じこもり、もう4時間が経過していた。 休憩や雑談を挟みながらも効率よく勉強を勧めていく様には俺も感心せざるを得ない。 今日のためにいろいろスケジュールを考えていたとしか思えない。実際そうなのだろうな。 最後の問題が解けたときはもう時計の針は日付変更線を越えていた。 「先風呂入るから」と言ってハルヒは部屋から出て行き、俺は一息つく。 ハルヒの使っていた教科書やら問題集やらをそっと覗いてみると、案の定線やメモやらがびっしりと書き込まれており、俺のためと思われる書き込みもある。ほんとに忙しい団長さんだ。 こら。ニヤケ顔になってるぞ。今日だけでもしっかりしなきゃな。 俺が風呂から上がって部屋に戻ると、ハルヒは俺のベッドで眠りこけていた。 布団は用意すると言った筈だがそういや準備してなかったな。 それ以前に寝る直前にまとめ問題やるって言ってたのに。教師が先にばててどうする。 ・・・なんてな。ご丁寧に目の下にうっすらとクマなんかつくっちまってさ。 もし俺のために徹夜してできた・・とかだったら・・・、いや考えちゃだめだな・・・。 ハルヒの今日のスケジュールはほぼ完璧だった。 俺の今日のスケジュールは俺自身でさえ未知数なのにな。 ベッドに腰掛ける。 こんな時間だと俺でも眠い。まとめ問題は朝にでもやればいいだろう。 ハルヒに視線がいく。風呂上りの女の匂い、乾ききっていない髪、いつもの活発さとのギャップ、独占感、無防備に上下する肩・・・ハルヒの全てが俺を誘ってるようにしか見えない。・・・だめだな俺。 とりあえず起こしたほうが良さそうだ。 「ハルヒ、起きろ。ハルヒ、おいハルヒ」 「・・・ん・・・。キョン?」 こいつは低血圧なのか。スローな動きで起き上がり半分しか空いてない目を向けてくるハルヒ。 なんかもう反則どころの騒ぎではない。とにかく俺は隣に座るよう促す。 「もう寝るのか」 「・・・・どっちでもいい」 「眠いのか」 「うーん・・なんか思ったよりも疲れてただけよ。」 「徹夜で俺の為に予定表組んでたんだよな」 「・・・それが何」 「ありがとう」 「珍しいわね。あんたが素直に感謝するなんて」 「当然だろう。好きなんだから」 「・・・・キョン・・・」 ハルヒの手を握り、愛しむように撫ぜる。 引き寄せられる勢いでキス。そしてキス。 見つめあい、ハルヒが優しく微笑んだところで俺はハルヒを押し倒した。 「やっ・・!」 ハルヒは驚いた顔で見つめてくる。・・・当然だろうな。 徐々に不安の色も見えてきて、俺は動揺する。 「ハルヒ・・・その・・・いい、か?」 「・・・」 ハルヒは不安げな表情のまま黙り込んでしまった。 普通に考えればいきなりは無理に決まってる。急に罪悪感が湧く。 「すまん・・・すまない・・・あー・・」 「・・さい。」 「・・・へっ?」 「優しく、しなさい。」 「ハルヒ!?」 ハルヒは目を逸らして唇をキュッと結んだ。そしてちらりとこちらを見て。顔をちょっと赤くした。 心臓が壊れたように暴走を始める。俺はもう何も考えられなくなったようだ。 当たり前というべきか、谷口から借りたAVと現実は大きく違った。 ハルヒは目をつぶってずっと黙り込んでいた。 たまに目を開けて俺を見ては、荒くなった息を整えようとしていた。 俺が「声我慢しなくていいぞ」「力抜けよ」と声をかけても生返事だ。 俺自身、興奮しきって夢中だったせいで鮮明には覚えてない。 結構長い時間前戯をしていたが、結局ハルヒはずっと堪えるような表情だったと思う。 でも徐々に俺の努力が実ってきたようで、気が付いた時には眉間のシワも消えていた。 むしろ今度はこっちが堪える番になってきた。ので、俺は声をかけた。 「ハルヒ、その・・大丈夫か。」 「・・・ん」 「嫌だったらやめようか」 何故か俺はハルヒがここでどう否定するかを楽しみにしていた。 ハルヒは首を横に振る。もうそれだけで俺は衝動に支配されそうになる。 ハルヒは相変わらずだんまりなので「じゃあいくぞ」とでも声をかけようか迷ってる時に、ハルヒが口を開いた。 「・・キョン」 「どうした?」 ここでハルヒはいつも俺に見せるような不適な笑みを見せた。 俺が驚いている間もなく、ハルヒははっきりと言った 「ほら、早くきなさいよ。」 痛みを堪える表情が、喘ぎを堪える表情になる。 シーツを掴んでいた手が、俺の背に回される。 甘い息の中に、すがるように俺を呼ぶ声が聞こえるようになる。 全てが俺を刺激し、自我のコントロールを不能にした。 そのときはっきりと覚えていたのは、俺が壊れたようにハルヒの名前と愛の言葉を叫んでいたこと。 そして終わった直後の短い会話だけだった。 「・・・キョン」 「ん?」 「愛してる」 そしてハルヒは更に耳元で、俺の名前を呟いた。 こいつが一度も呼んだことのなかった、俺の本当の名前を。 5日目、予想通り。 布団の中での俺の下半身はどえらいことになっていた。俗に言う夢精である。 なんとなくだが、今日もリアルな夢を見るとしたら内容はあの夜しかないとわかったからな。 とにかく見つかる前に処理しよう。 どうせなら夢の続きとして次の朝まで見ていたかった。 今でもよく覚えている、あそこまで俺に甘えてきたハルヒは当時新鮮すぎたからな。 といっても大したことはない。朝、カーテンの間から差し込む光で目が覚めた俺たちは笑いあい、キスを繰り返し、気持ちを素直に口にする。 布団から出ようとする俺の腕をひっぱって「もうちょっと・・・」と恥ずかしそうに言うハルヒは可愛いってレベルじゃなかった。 その後の会話で知ったことだが、ハルヒは俺がやろうとしていたことを知っていたらしい。 なんでも、前日に空にしたゴミ箱に唯一あった薬局のレシートを見てすぐにピンと来たらしい。 驚いたり不安になったりしたのは、俺が強引だったから・・・って俺はそんなつもり無かったんだけどな。 更に補足をしておくと、ハルヒがだんまりなのはこの最初だけで、次からは実にハルヒらしい反応を味あわせてくれた。俺もそれに応えようといつも必死だったな。 たまには思いっきりいじってやりたくなるが、なかなかそうはいかないみたいで、むしろハルヒが攻勢になって俺をヒーヒー言わせる時もあったぐらいだ。 いかん。そろそろ現実に帰らねば。 夜、仕事が終わった後俺は古泉に電話した 「古泉です」 「よお。久しぶりだな」 「珍しいですね。あなたから僕に連絡をよこすなんて。」 「そうでもねえよ。」 適当に挨拶をして、俺は早速本題に向かうことにした。 説明はそう長くはかからなかった。 ここ数日、高校の時のハルヒとの思い出が夢として出てくること。その夢がはっきりしていること。 ハルヒがもしかしたらイライラしてるかもしれないこと。 「で、だ。ハルヒの調子はそっちから見たらどうなのかなと思ってな。」 「そうですか。残念ながらあなたの期待には沿えません。その話には正直驚かされました。 何度でも言いますが涼宮さんはあなたと共に生活を始めてから本気でイライラすることはほとんど無くなりましたからね。 安定したとは言い切れませんが、今もです。」 「そうか。」 正直こういう結果じゃないかと薄々思っていたのであまり驚かなかった。 でももしちょっとでも異変がおきたらすぐに知らせろよ。 「もちろんです。しかし僕が思うに、普通に考えてあなた自身で解決するのが望ましいかと。」 「やっぱりな」 結局古泉に電話してもあまり解明が進んだとはいえなかった。 まぁ深刻な事態ではなさそうで安心した。そのときは嫌でも巻き添えを食うからな。 自分で言うのもあれだが、ハルヒのことを一番解ってるのは俺だ。俺しかいないんだ。 もしハルヒが俺に何かを求めたい、または求められたいのなら俺は全力で応えたい。 努力するさ。全力で努力するから。 だから・・・その間ぐらいは 懐かしい夢ぐらい見てもいいよな。ハルヒ。 俺は今、ハルヒの部屋の前にいる。 扉をノックするのが怖いが、それじゃお先は真っ暗だ。 なので、ノックする。返事は無い。 「勝手に入らせてもらうぞ。」 俺は恐る恐るハルヒの部屋に入った。入り口で立ちすくむ。 ハルヒは机に座っていた。出てけ、とも来るな、とも何も言わなかった。 後ろ向きなので表情はわからない。 ハルヒとはもう何度も喧嘩になった。 言い合いみたいなものは毎週のようにやっている。 大抵俺がやれやれとでも言いながらハルヒに譲ってしまうのだが、俺が引かなきゃハルヒは滅多に引かない。その結果がこれだ。 ハルヒは俺を罵倒し、部屋に閉じこもって3時間。 俺も大層怒りに震えていたが、ようやく頭が冷えた。俺から干渉するのは不服だがこれがルールというものなのかね。 悪い方が謝るなんて誰が決めた。問題は和解できるかどうかなんだよ・・・な。俺たちは。 俺たちが同棲を始めてまだ半年。 別々の大学に通っているせいで色々と食い違ったりして大変だがなんとか乗り切ってきた。 が、お互いにいろいろと溜め込んでいたらしい。 ハルヒは食事を作るので、俺が突然「悪い!今日飲み会行くから晩飯いいや」 とメールを送ったりすると大層ご立腹になされた。当たり前だよな。 しかしそれはハルヒも一緒で、同じことを何度も言い聞かせたこともあったっけ。 ストレスと似たようなものだろうか。気づかないうちにいつの間にか溜まって、気がついたら暴発してしまう。 付き合い始めて高校卒業まではハルヒと一緒にいてストレスなんざ溜まる余地も無かったが・・・ 同棲を始めてからは、何かと不憫が続いてしまったようだ。 今日だって、きっかけはTVのチャンネル争いから始まり、どうして根拠のない浮気話にまでなるのか。 でもこれをすらりと乗り越えるのが俺たちなんだよな。 さて、ハルヒの背中に向かって俺は言葉をつむぎ始めた。 何を言ってるかは自分にもいまいちわからない。 なんせ今は夜中の2時である。生理的にきつい。 気づいたら土下座なんかしている。時計は3時を越していた。 俺は何を言っているんだ。声が枯れてるような気がするがどうでもいい。 ハルヒの声が聞こえた、気がした。 床しか見えなかった俺の視線にハルヒの足が入ってきた。顔を上げようとした俺だが、頭を手で押さえられた。 「何でいつもこうなのよ。」 ハルヒの呆れた声が届いた。まったく何でいつもこうなんだろうな。 「いつもいつも、何であんたが謝るのよ。」 床とハルヒの膝しか見えないぞ。 「ほとんど悪いのはあたしなのに」 どうでもいいだろそんなこと。 「明日あんたの好きなものでも作ってごめんって言うつもりだったのに。」 それは是非実行してくれ。 「何であんたは全部背負い込むお人よしなのよ。」 声、震えてないか。 「もうしゃべらないで!」 「うぇっ!?」 頭を上げようとした俺をハルヒは膝に押さえつけた。いや・・・いろんな意味でやばいぜこれは。 それでも上を向こうとする俺にハルヒは目隠ししやがった。 「だーめ・・・。」 別にどんな顔してても俺はどうも思わんぞ。 と言いたいがここは言わない方がいいだろうな。 それでも今のハルヒがどんな顔をしてるか見たかったな。 しかしよくよく考えてみろ。 膝に頭を押さえつけられ、そのまま仰向けになる。要は膝枕だな。 目隠しをされる。会話が終わる。そして今はもう夜中の3時過ぎだ。 それで気持ちが落ち着いたらどうなるか。サルでも分かるな。 俺はそのまま見事に眠りこけてしまったわけだ。 ・・・寝足りないな。 チュンチュン聞こえるのは鳥の鳴き声だろう。ってことは今は早朝か。 この匂いはハルヒの部屋・・・そうか、俺は深夜にハルヒの部屋に押しかけたんだったな。 なんだかあたたかい。そういえば体に毛布がかかっている。ハルヒの奴・・・ 目を開けようと思えば開けられるだろう。顔を隠すものは何も無い。 でもそれは無理ってもんだ。頭や髪の毛を撫ぜられているんだからな。 手を撫でられたり、耳元をいじられたり、首に触れられたり・・・本当にハルヒなのか? うふふ・・っと軽い笑い声が聞こえた。畜生・・・かわいいじゃないか。 でもちょっとだるいんだ。床に寝てるようじゃ疲れは取れないからな。 だからもう少し・・・。もう少しだけ寝かせてくれよ。 もう少しお前の温かさに触れていたいから・・・ ・・・・やっぱり寝足りない。 素直に起きて布団に入ればよかったかな。 すーすー寝息が聞こえる。目を開けてみようか。 やっぱりハルヒは寝ていた。 俺の体の位置がずれていたのはハルヒが壁にもたれられるようにしたのだろう。 時間を見たらもうすぐ昼じゃないか。大学を思いっきりサボってしまったわけだな俺たち。 ちょっと惜しいがむくりと起き上がってみる。 普通部屋の壁にもたれかかって寝れるか?電車で寝たほうが疲れが取れるんじゃないかと思うな。 だから俺は俗に言うお姫様だっこでハルヒをベッドまで運ぶことにした。 ハルヒを寝かしつけてるうちに、俺は無性にさっきのお返しがしたくなった。 恐れ多いがハルヒのベッドに忍び込み、髪の毛をなでてみた。ついでに色々いじくってみる。 なんて柔らかいんだろう。なんて思ってるうちにハルヒがもぞっと動いた。 うーん と唸るハルヒ。目をつぶったまま「キョン・・んー・・」とか言うな。可愛すぎるから。 とりあえず俺は「今日は土曜日だからゆっくり寝ろ」と繰り返し呟いておいた。 しばらくしてハルヒは再び寝息を立て始めた。俺ももう眠くてたまらんな。心地よすぎる。 腕をハルヒに回して俺も寝ることにした。 昼過ぎにハルヒに叩き起こされ罵られまくったが別に後悔はしていない。 ・・・チュンチュン聞こえるのは鳥の鳴き声だろう。ってことは今は朝か。 この匂いは俺の部屋・・・そうか、俺はリアリティのある夢から現実に帰ってきたんだな。 ってな。もうそろそろ数字が曖昧になってきたが、今日で6日目だろう。 まさか同棲してる時の出来事が来るとは思わなかった。 進路騒ぎ、高校卒業、同棲開始、大学入学・・・いろいろあったはずなのに1年ぐらいは飛んだぞ。 これまでから察するに、もう高校にいた頃が夢に出てくることはないだろう。年月順だからな。 これでいくつか推測できることがあるが、はっきりしているのはこの夢現象はいつか終わるということだ。 寂しいのか怖いのかほっとするのか・・・変な気分だが、そのときまでに真実がわかるといいな。 今日は日曜日だ。俺の会社は休みなのでれっきとした休日だった。 俺は勉強と資料探しを兼ねて図書館に行くことにした。 丁度話をしておきたい相手もいるしな。 「長門」 やっぱりいた。椅子に座ってこれまた御堅い本を読んでいる。 古泉がダメでも長門ならわかることがあるかもしれない。そういうわけだ。 「よう、元気にしてたか」 コクン、と長門は頷き、古泉よろしく適当に挨拶した後俺は早速説明を始めた。 話が終わると長門は得意の単語説明を始めた。 「あなたに夢を見せているのは涼宮ハルヒ」 なんと。いきなり核心を突いてきた。 「やっぱりそうか。理由はわかるか?」 「不明」 「・・はは、そうだよな。」 その後も俺はいろいろと質問攻めにしたが、結果はあまり芳しくなかった。 それでも、わけのわからん宇宙人や未来人じゃなくて、ハルヒがこの現象を起こしているとわかっただけでも俺は良かった。 俺は最後に気になっていた質問をした。 「ハルヒがここのところ体調を崩している時があるんだ。原因がわからなくてな」 「・・・」 「本人は風邪って言ってるんだが」 「・・・」 「もしかしたらここ数日の夢と関係あるんじゃないかと思ってな。」 「・・・わからない」 俺が意外に思っているともう一言付け加えられた。 「夢とは関係ない。」 俺は少したわいもない話をした後、長門に礼を言って図書館を出た。 なるほど。古泉が言ってたことにも納得するな。こりゃお手上げになりそうだ。しないがな。 しかしハルヒの仮風邪とハルヒの夢現象が関係ないとは驚いた。 ということはハルヒは本当にたまに気分が悪くなると考えざるを得ない。 これじゃますますわからん。せめて夢にヒントが出てくればいいのに。 いや、本当はあるはずなんだ。間違いなくハルヒが見せてるんだからな。 今日も早めに寝ることにしよう。 さっさと寝て、また夢を見たいんだ。 少しでもヒントをつかみたいからな。 それ以前に、俺は毎晩ハルヒと過ごした日を夢で見るこの奇妙な習慣。 それが楽しみになっているんだからな。 涼宮ハルヒの糖影 転へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5105.html
プロローグ 『宇宙人』と言われてその姿を想像する場合どのようなものになるかと問われると、 かつて俺は透明のヘルメットを被った八本足の巨大なたこを想像していた。 火星人ってやつだ。 その他にも宇宙人に対して人々が抱く視覚的イメージの一例として「グレイ」っていうのが有名だとかなんかのテレビで見たな。 アレだよ。灰色の猿みたいな感じのアレ。 当然そんなものは人間の勝手な想像もしくは妄想に過ぎないのであり、 灰褐色で猿面、なんていうお世辞にも良いとは言えないイメージは本物の宇宙人のひんしゅくを買いそうだと俺は思う。 まあもしも宇宙人が現存すればの話だったのだがな。 しかしそのもしもである。 俺には宇宙人の知り合いがいる。 名を長門有希。 ボブカットをさらに短くしたような髪型で、谷口いわくAランク-に属する学年屈指の美少女だ。 灰色でもなければ猿面でもない。 なぜこのなんの変哲もない一美少女女子高生を俺が宇宙人だと言い張れるのかには理由がある。 その理由ってのがまた簡単で、本人から直接カミングアウトを受けたから、というどうしようもないものだ。 その突拍子もないカミングアウトをなぜ、俺が鵜呑みにしたかっていうのは置いとけ。 俺だって最初から信じていたわけじゃない。 でも信じざるをえなくなったんだ。色々あったんだよ。 さてその自称宇宙人は今、教室の隅でパイプ椅子に腰掛けて読書にいそしんでいる。 放課後。いつもの部室。いつもの風景。 もはや長門はこのパイプ椅子と手に持つハードカバーもセットで部室に付属する備品と化していた。 これは俺の主観だが本を読んでいる長門の無表情な横顔はかえって叙情的で絵になる。 谷口の評価もバカにできない。 「・・・。」 俺の視線に気づいたのかハードカバーから目を逸らし顔をこちらへと向ける長門。 「最近は平和でいいな。」 「・・・。」 俺の言葉を無視した長門の視線は再びハードカバーへと舞い戻る。 この場合「平和」という言葉は、涼宮ハルヒが割合おとなしくしている、という意味で用いられている。 おとなしくと言ってもハルヒの脳内では絶えずアドレナリンの生産が追いつかない状態であることは確かで、 過去と現在を行き来したり、変な空間にすっ飛ばされたり、ナイフで腹をえぐられたりすることは無いものの、 俺は団長を退屈させないようにわがままに付き合うという全くもって充実してはいないがそれなりに忙しいという矛盾した生活を強いられていた。 まあそうしてハルヒのご機嫌を取ることによって、あいつと二人で灰色の無人空間に閉じ込められる事が無くなるなら、安い代償だ。 そんなわけで、今日も俺は授業終了と同時にダラダラと部室へとやってきたのだ。 他にする事ないの?っていう突っ込みはするな。重々身にしみてるから。 今日の部室には俺と長門の他誰もいなかった。 古泉と朝比奈さんの姿はない。 季節は夏。暑い。 窓の外からは気合だけやたら籠った野球部の声が聞こえてくる。余計暑い。 ハルヒはまだ到着していなかったが、遅れてもあいつがこの部屋に現われないという事はないだろう。 ならばしばしの間でもいい。 せめてあいつが来るまで俺は机に突っ伏してまさに惰眠をむさぼろうとした瞬間だった。 「おーっす!!・・・あれ?あんた達二人だけ?みくるちゃんと古泉くんは??」 部室のドアを勢いよく開けてヤツが登場した。暴走女子高生、涼宮ハルヒ。 不意を突かれ絶頂からどん底へと落とされた俺は頭を掻きながら不機嫌な顔を作りゆっくりと身体を起こした。 「なによその顔。ていうか、みくるちゃんと古泉くんは?」 「なんだ。なんも聞いてないのか?俺も知らん。まだ来てないって事は、帰ったんじゃないか?」 「はあ?なによそれ!団長に断りもなく!」 そう言ってハルヒは怒りをあらわにした。 そう言われれば珍しいこともあるもんだ。古泉はともかく、朝比奈さんまで無断欠席(?)か。 SOS団の面々は放課後部室へと足を運ぶ事が既に習慣化している。 俺とて例外ではないが。 本意ではないが他に行く場所もする事もないので律儀にハルヒの言いつけを守っているうちに、 いつしか自然に終業ベルと同時にこの部屋へと足が向くようになってしまっていた。 慣れとは恐ろしいものである。 しかし、これはマズい。非常に。もっと早く気づくべきだった。 朝比奈さんも古泉もいないとなると、今日のこいつのお守はこの俺一人に任されちまうというわけだ。 とばっちりはごめんだ。 「ま、そういう事だ。俺も帰らせてもらうとするかな。お前も今日くらいはさっさと家路についたらどうだ、ハルヒ?」 「ちょーっと待った。何言ってるのあんた?誰がいつそんなこと許可したの?帰るなんてダメよ、絶対。」 そそくさとかばんに手をかけ、無敵監獄からの逃走を試みる俺を両手で制止する看守涼宮ハルヒ。しまった。遅かった。 「朝比奈さんも古泉もいないんだぞ?何をするんだよ。今日くらい少しは有意義な時間を過ごさせていただきたいもんだ。」 「みくるちゃんと古泉君は・・・まあいいわ。今日はちょっと調べたいことがあるの。 あんたにはそれを手伝ってもらうわ。ついてきなさい。有希はここにいて。」 言うが早いが、部室のドアを開けて外にズカズカと歩き出すハルヒ。 「やれやれ。」 思わず口に出る。 「はあ~・・・しょうがねえな。」 俺はページをめくる左手以外1ミクロンも動かずに読書を続けていた長門を一瞥し、深く溜息をついた。 「ちょっとキョン!早く来なさい!!」 ドアの外から大声で捲し立てるハルヒ。 「へ~へ~今行きますよ。団長。」 脱獄に失敗した模範囚もとい俺は、なすすべもなく新たな労役へと連行される。 この暴君から釈放される日は果たしていつなのだろう。一生かかってもそんな日は来ないような気がする。 校内をズカズカと必要以上に大股で闊歩する団長に付いて、俺は一体これからどこに行くのかと思えば、なんのことはない。 行き着いた先は図書室だった。 中に生徒は誰もいない。司書室にいるはずの図書委員の生徒さえいない。 「誰もいないわね。ちょうどいいわ。今のうちにわたしが選んだ本を部室に運び出すのよ。」 「おい。そりゃ校則違反だぞ。図書室の本は持ち出し禁止だろ。」 常識的な突っ込みを入れたつもりの俺であるが、相手が相手だ。常識は通用しない。 「はん?校則がなんぼのもんよ。我がSOS団、つまりわたしがこの学校のルールよ。」 ムチャクチャ言いやがるこいつ。 「ミステリーサークルについて書いてある本を探すのよ。ほら、あんたも見た?昨日のニュース。」 そういえばやってたな。うちの高校の近くの芝で円形のミステリーサークルらしきものが発見されたらしい。 綺麗な円の形に芝が倒れている映像と共に「怪奇!県立北高近くの空き地で宇宙人からのメッセージ!」というテロップが流れていたのを覚えいている。 ただの○にどのようなメッセージが隠されているかはまったくもって謎だが、俺が断言しよう。それは宇宙人の仕業じゃねえ。 宇宙人は地球人と接するのにそんな周りくどいことはしないのだよ。対有機生命体コンタクト用ヒューマノイドインターフェースを使うんだ。 よってそのミステリーサークルもどきはただの悪戯に過ぎないだろう。 だいたいなあ。今やミステリーサークルは人為的に作られたただの悪戯っていう説が一番有力なんだ。 そんなことも知らんのか。 「そうとは限らないでしょ!?わたし昼休みに実際に行って見てきたんだけど、あれは人の仕業じゃない気がするのよね。 なんか胸騒ぎがしたわ。」 昼休みといえど学校の敷地外に出てはいけないというまたもや常識的な突っ込みは先ほど述べた理由により却下されるであろうことは確実だ。 なので俺は思ったことを聞いた。 「仮にそうだったとして、お前はいったい何をどうしたいんだよ。」 「決まってるじゃない!そのミステリーサークルの謎を解き明かして、宇宙人とコンタクトを取るのよ! 我々SOS団はこんな機会をずっと待ってたんだわ!ついに尻尾を出したわね宇宙人さん!」 「はあ・・・」 思わずため息が出る。やれやれ。 「なによその反応。あんたもSOS団ならもっとやる気を出しなさいよ。 ミステリーサークルなんて絵にかいたような謎がついに転がってきたのよ! わかったらさっさと本を部室に運び出すのよ。いいわね!」 こうなってしまっては誰にもこの暴走機関車を止められない。ま、いつものことさ。 俺はハルヒが次々と選び倒した本を、えっちらおっちら部室へと運んでいった。 山積みの本を抱え、汗だくで部室に戻ると、長門は先ほどの体勢を崩さずに読書を続けていた。 俺は団長机の上に奇怪な幾何学模様が表紙を飾る怪しげな雰囲気の本達をドサドサと下ろした。 Yシャツの袖で汗をぬぐう。暑い、おまけに重い荷物を抱えたままの階段の上り下りで吐きそうだ。 俺はお茶をオーダーしようとして、唯一の心の拠り所、朝比奈みくるさんがいない事に気がついた。 しかたなく自分でカセットコンロに火を着け、お茶っぱの用意をする。 「長門、お前も飲むか?」 「・・・」 ゆっくりとページから目を離し、微かに俺に頷いて見せる長門。 俺は湯呑を2つ用意し、そこに淹れたてのほうじ茶を注いだ。 ズズズと二人して熱いお茶をすする。 あー・・・うまい。 ふと思い立ち、俺は長門に聞いてみた。 「長門、お前は昨日のニュースを見たか?あのミステリーサークルについてどう思う?」 「なにも。」 「また巨大カマドウマと闘ったりする事にならないよな?あれはハルヒが作り出したもんじゃないだろ?」 「そう。」 「じゃあやっぱりあれは誰かの悪戯なのか?」 「おそらく。」 長門と卓球のラリーの如く素早いやり取りを終えた俺は心の中で安堵の溜息をついた。 長門のいつもと変わらぬこの態度は俺に安心感を与え、余計な心配をせずに済んだ。 今回はミステリーサークル探索ごっこに付き合ってりゃ事は終わる。 ハルヒの思いつきに抵抗しても無駄な事は百も承知。ならば、流れに身を任せようじゃないか。 しかし、このとき俺は気づいていなかった。いや、この時点で気づくはずもない。 とんでもない激流に身を任せてしまったことに。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/21.html
ハルヒ「週末にスキヤキパーティーするわよ」 古泉「いいですね、僕は鍋を用意しますよ」 みくる「私はお野菜もってきますね」 キョン「野菜は多いですからね俺と分担しましょう、朝比奈さん」 長門「…肉、もって来る」 ハルヒ「じゃあ、私はたま…」 古泉「卵も僕が持ってきましょう」 ハルヒ「えっと、マロ…」 みくる「マロニーと蒟蒻は私が用意しますね」 ハルヒ「やっぱり白…」 長門「米…持ってくる」 キョン「やっぱ友達同士で持ち寄るってのはいいな」 一同「ハハハ」 ハルヒ「……」 ハルヒ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キョン「…………」 ハルヒ「キョン!あんた人の話聞いてるの!?もういいわ、古泉君よろしく」 古泉「マッガーレ」 ハルヒ「…………有希、頼める?」 長門「だまれ」 ハルヒ「うっ…み、みくるちゃん頼める?」 みくる「なんであなたのいうことを聞かなくちゃいけないんですかー?」 ハルヒ「わかったわよ。私が行くわよ…ぐすっ」 バタン 古泉「マッガーレ」 ハルヒ 「ねえキョン、昨日私が言ったテレビの心霊特集見た? ほんと子ども騙しにも程があるわ! あんなの誰が見たって……」 キョン 「え、あ……いや、悪いな……見ようと思ったんだけど、妹怖がるから見れなかったんだ」 ハルヒ 「え……あ、ああ……そう……仕方ないわよね……」 キョン 「悪いな」 ハルヒ 「ん……別に」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………」 キョン 「…………」 ハルヒ 「…………………………………それでね」 キョン「あれ……? 古泉まだか……?」 ハルヒ「古泉君、なんか急にバイト入ったからこれないらしいわよ」 キョン「そうか、じゃあ暇だな…………そうだ、たまにはオセロしないか? お前とはやったことないよな?」 ハルヒ「……仕方ないわね、やってあげるわ、じゃあ負けたほうは罰ゲームね」 キョン「……キツイのは無しだぞ、いいな?」 ハルヒ「あら、キョンは負けるの怖いの? そりゃそうよね、キョンの頭で私に勝つなんて……」 キョン「フンッ、俺の秘技【四方返し】を見てもそんなこといってられるか? ……ちょっと待ってろ、用意するから……」 ハルヒ「ふーん、なかなか楽しませてくれそうね……!」 キョン「楽しむなんて生易しいもんじゃ……アレ……? ……あっ、オセロ昨日持って帰ったんだった」 ハルヒ「へ……?」 キョン「悪い、オセロねえや」 ハルヒ「…………」 キョン「……暇だな~」 ハルヒ「…………(ワナワナ)」 ハルヒ「あ~も~暇ね~……」 キョン「珍しく賛成だ」 ハルヒ「ん~……そうだ、キョン何か面白い話してよ」 キョン「……急に言われてもなあ……」 ハルヒ「別にいきなり面白いのじゃなくてもいいわよ、ちゃんと笑ってあげるから」 キョン「……」 キョン「……昔さ、俺んちの隣のおじいちゃんが死んじゃって……」 ハルヒ「アハハハッ!! それサイコー!!」 キョン「…………」 ハルヒ「アハ…………ハ」 キョン「…………」 ハルヒ「…………」 キョン「……ダメだ……」 ハルヒ「うっ……ひっく……ごめんなさい……ぐすっ……」 ハ「キョン、すき焼きするからお肉買ってきて」 キ「ああ…分かった」 ハ(珍しく素直ね…) キ「長門、行くぞ」 ハ「!?」 長「………(無言で頷く」 出て行く二人 ハ「………」 ハ「キョン、ガスコンロのガス切れちゃったから買ってきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) ハ「キョン、スレ落ちそうだから保守してきなさい」 キ「あぁ、分かった。長t ハ「有希は連れてかなくていいわよ!」 キ「………チッ」 ハ(露骨に舌打ち!?) 長「……チッ」 ハ(こっちも!?) ハルヒ「ねえキョン、スキヤキしたあとご飯いれる派?」 キョン「ああ、うちは餅とかうどんも入れるな」 ハルヒ「あ! お餅入れるとおいしいわよね! 分かる分かる!!」 キョン「ああ、そうだな」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「………」 キョン「………」 ハルヒ「…………………………………………………それでね」 キョン「ん……でも、やっぱりハルヒって料理うまいな」 ハルヒ「えっ……! あ……と、当然よ、当然! 私はキョンと違って万能型だからなんでもできて当たり前なのよ!」 キョン「………そういうトゲのある言い方やめろよ、せっかく人が誉めてんのにさ……あ~あ……誉めて損した」 ハルヒ「え……? あ……あ、その……」 キョン「………じゃあそろそろ帰るわ、長門、手伝ったほうがいいか?」 長門「大丈夫」 キョン「そっか、悪いな、じゃあな」 ――パタン ハルヒ「あ……」 長門「……もっと素直になったほうがいい……」 ハルヒ「…………そう……よね……ハァ……」 ハルヒ「ねえキョン、なんでみんな部室に来ないのかしら?」 キョン「・・・・・IEの履歴は消しといたほうがいいぞ」 「それじゃあな、ショタコン」 ハルヒ「ねぇキョン!卵の黄身と白身どっちが好き?」 キョン「何だいきなり」 ハルヒ「いいから答えなさいよ!」 キョン「・・・キミが好きだ」 ハルヒ「ごめん聞こえなかったわ、もう一回言ってくれる?」 キョン「キミが好きだ」 ハルヒ「私も好きよ!キョン!」 キョン「そうか、あの口の中の水分を根こそぎハンティングする感が大好きなんだよ」 ハルヒ「いや・・・そうじゃなくて・・・」 キョン「ん?じゃあなんなんだよ。お、長門~今帰るのか~?丁度良い、茶でも奢るからちょっと付き合えよ」 長門「コクリ」 ハルヒ「・・・・・・・」 長門「・・・・私は白m」 ハルヒ「聞いて無いわよ!」 キョン「俺はSOS団を辞めるぞーハルヒー!!」 ハルヒ「そんな!?あんたのいないSOS団なんて意味ないわ思い直してキョン!」 キョン「じゃあ、お前も止めろよ。そうすれば一緒だろ」 ハルヒ「それもそうね。あんた頭いいわね。 それじゃあ、早速生徒会に知らせてくるわ」 キョン「やったな!これでこの部室は文芸部のものだ。 あの訳の分からない同好会以下の部ともおさらばだぜ!」 長門「…ブイ」 古泉「まったくあなたも人が悪いですね」 みくる「古泉君も止めなかったじゃないですか」 古泉「それもそうですね」 キョン・長門・古泉・みくる「アハハハハハハハハッ」 ハルヒ「待ってててね。キョン今帰るからね!」 鶴屋「今日は私のおごりさ、がっつり食べてくれにゃ」 ハルヒ「ほら、キョンこれ焼けてるわよ!はやく食べなさい!」 キョン「かってに俺のさらに乗せるな、汚らわしい」 「あ、朝比奈さん、それハルヒがひっくり返したやつです、食べない方がいいですよ」 「おい古泉、それは俺が愛情こめて焼いてるやつだ、勝手に食うな」 古泉「だから食べるんじゃないですか、ああ長門さん、それ、涼宮さんが触ったやつですよ」 長門「・・・ありがとう」 ハルヒ「らんららんららーん♪キョン食べてくれるかしら、私のおにぎり」 ハルヒ「あっれー?おかしいな?にけやの袋しかないや、ま、いっか」 学校で ハルヒ「キョン、おにぎり作ってきたから一緒に食べなさい!」 キョン「どうしたんだめずらし・・・・おちょくってんのかお前」 ハルヒ「え、な、なに?」 キョン「脇で握られたちぢれ毛入りおにぎりなんて食えねーだろ」 ハルヒ「え、いや、脇でなんて、それに、いま冬だしえ、いや」 ハルヒ「さあ、出来たわよキョン。たらふく食べなさい」 キョン「…何だこれは」 ハルヒ「何って見て分からないの?蕎麦よ、そ・ば。 今日は暑いからざる蕎麦よ。あまりの美味さに昇天するわよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 ハルヒ「??」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知って蕎麦を用意したのか。 昇天か、あやうく殺されるとこだったぜ」 ハルヒ「え、ちが」 キョン「黙れ殺人鬼!もう金輪際俺にちかづくんじゃねえ!あばよ!!」 ハルヒ「あっ、キョン待って!」 ズルズルズル 長門「刻み海苔がない。わさびの風味も足りないこれは蕎麦じゃない」 古泉「さあ、出来ましたよキョンタン。たらふく食べてください」 キョン「…何だこれは」 古泉「何って、見て分からないんですか?蕎麦です。 今日は暑いからざる蕎麦です。あまりの美味さに昇天しますよ」 キョン「…お前の気持ちはよく分かったよ」 古泉「・・・」 キョン「俺が蕎麦アレルギーだってことを知ってそばを用意したのか。」 古泉「はい。知ってます。」 キョン「?」 古泉「キョンタンが蕎麦アレルギーということで、そば粉を使わずに蕎麦を作りました。 苦労したんですよ。」 キョン「古泉・・・・・・俺の為に・・・・・・」 古泉「さぁ、たらふく食べてください!」 キョン「うう・・・・・・ありがとう古泉・・・・・・」 ズルズルズル 長門「白くて蕎麦にしては太い。むしろうどん」 ハルヒ 「もぅ!男同士でこすったり、さわったりして!!何が楽しいの!!ニンテンドーDSいっしょにやろうよ!」 キョン 「それ以上大声で叫ぶな。お前がいう言葉はすべて卑猥に聞こえる」 古泉 「それに、われわれはニンテンドーDSなんかしてませんよ。キョンたんをこすったりさわったりして遊んでいるんですよ」 ハルヒ「!! ちょっと・・・私の机とイスがないじゃない!」 ハルヒ「ねぇ朝倉さん、私の机がないんだけどどうにかしてよ。」 朝倉「うん、それ無理。」 ハルヒ「無理って・・・、あんた学級委員長でしょ!」 朝倉「死になさい。」 ハルヒ「・・・・・・」 ハルヒ「シャミセン~~~、ほれほれ~」 シャミセン「にゃ~」 ハルヒ「こっちこっち~~」 シャミセン「にゃーにゃー」 ハルヒ「やっはりあげなーいっ!」 キョン「おい、あんまいじめんなよ」 シャミセン「シャー!!」 ハルヒ「キャー!」 キョン「おい、ぱ、パンツ見えてるぞ…///」 一応いじめもののつもりだ ハルヒ「みんな!今度の日曜日に探索に向かうわよ! もしかしたら宇宙人とか何か出るかもしれないわ!」 みくる「こいつはくせぇッー!電波のにおいがプンプンするぜッーー! こんな電波には出会ったことがねえほどなァーーーッ 七夕で電波になっただと?ちがうねッ!!こいつは産まれてついての電波だッ! キョンくん 早えとこ病院に渡しちまいな!」 ハルヒ「な、そこまでいう必要ないじゃない!有希ちゃんは来るでしょ」 長門「これは試練だ 電波に打ち勝てという試練を受け取った」 ハルヒ「ひ、酷い みんなして酷いこと言わなくてもいいじゃない」 キョン「おい!これじゃあまりにもハルヒが可哀想だろう! 確かにハルヒは電波だがここまでいう必要がないじゃないか!」 ハルヒ「キョン…、それじゃ来てく【キョン】「だが断る」 部室から出て行く部員達、残されたハルヒ ハルヒ「私が何をしたっていうのよ・・・」 古泉「なんていうか……その… 下品なんですが…フフ…… 勃起………しちゃいましてね…………」 みくる「おめーなにキョン君たぶらかしてんだよーああ?!」 ハルヒ「すいません、私は恋しちゃだめってことですか?・・・・」 みくる「恋するなとは言ってないだろうが!!だったらキョン君以外でしろ!!わかったな!!」 ハルヒ「・・・・・・・はい」 みくる「明日も虐めてこいよ!!か弱い女の子に男は弱いんだからな!!」バタバタバタ ハルヒ「はい・・・・」 ハルヒ「キョン・・・・・・・・」 ハルヒ「やめて!電源コードを鼻にささないで!!」 みくる「ふふふ、いくわよ?スイッチ…」 ハルヒ「やめてえええぇぇぇ」 みくる「オン!!」 かちっ みくる「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば」 ハルヒ「ひ、ひゃあぁぁあああ」 キョン「ハルヒ・・・お前に言っておくことがある」 ハルヒ「なによ」 キョン「オレは阪中さんのことが好きだ」 ハルヒ「!?と、ととと突然なに言い出すのよ!」 キョン「オレは本気だ。2番目は朝倉だ。それはどうでもいいんだが、 どうしたら彼女と付き合えると思う?」 ハルヒ「あ、あんたなんかがあの子と釣り合うワケないでしょ! なんたって相手はお嬢様よお嬢様!顔だってかなりかわいいし!」 キョン「わかった。お前はアテにならなさそうだ。他をあたってみる」 ハルヒ「ちょ、ちょっとキョン!どこ行くのよ!」 キョン「ちなみにハルヒ、お前は12番目に好きだ」 ハルヒ「・・・・・・・・」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見た!?」 キョン「黙れよ切れ痔女( ´,_ゝ`)」 ハルヒ「き、ききききき切れ痔じゃないわよ!キョンのバカあぁぁぁぁっ!」 ハルヒ「うわあぁぁ~ん!」 キョン「じゃあ俺が痔を治してやるよ」 ハルヒ「へっ?何を言って…きゃあ!ちょ…やめ…」 キョン「へへへ…なかなか綺麗なケツしてるな」 ハルヒ「アナルだけは!アナルだけは!」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記見たでしょ!? …見たんでしょ? 白状しろ~~~」 キョン「……いや…(お前に)興味無いし…帰るわ」 ハルヒ「ちょっとキョン!あたしの日記み、見た!?」 キョン「えぇ、机に置いてあるあれ朝比奈さんの日記じゃなかったのか!?」 ハルヒ「やっぱ見たのね。この覗き魔」 キョン「プッ、お前の日記だったのあれクククッ…アハハ」 ハルヒ「何よ?笑われる内容は書いてないわよ、団長日誌なんだから」 キョン「ハハハ、だって乙女チックな文字にクマやウサギの手書きイラストだぜ」 ハルヒ「なっ、何よっ!!私だって女の子なんだからねっ、バカキョン!!」 長門「…かかと落とし!」 みくる「ふみゅ~~、ぃたいです~~」 古泉「ははは、空中モトヤチョープ!」 ハルヒ「ちょっ、ちょっと何すんのよ!!!」 ………… キョン「ハルヒ、空気読めよ…って言うだけ無駄か」 みんな「あはははははははは!!」 ハルヒ「うぇ~ん、腫れてるよ…」 ハルヒ「キョン、私の気持ちに気付いてくれるかな?」 長門「…それはない」 みくる「何ねぼけたこと言ってるんですかぁ?」 古泉「今日は差し入れを持ってきました。フンモッフベーカリーのカレーパンですよ。」 みくる「わぁ、知ってます。あそこのカレーパンって並ばないと買えないほど人気なんですよね。」 古泉「あそこのパン屋の主人とは古い付き合いでしてね、特別にとっておいてもらったんですよ。 さぁキョン君、どうぞ。」 キョン「あぁ、悪いな。」 古泉「朝比奈さんもどうぞ。」 みくる「はい、ありがとうございます。」 ハルヒ「気が利くじゃない古泉君!」 古泉「長門さんも。」 長門「・・・・・・」コクッ キョン「あれ?古泉、お前の分は?」 古泉「ちゃんと人数分買ってきたんですけどね・・・あ、気にしないでください。」 キョン「たぶんこの中にあつかましい奴が一人いるんだろうな。」 みくる「・・・・・・チラ」 長門「・・・・・・チラ」 ハルヒ「・・・・・・・あの、古泉君、私お腹いっぱいだから・・・・。」 ハルヒ「東中出身、涼宮ハルヒ。ただの人間には興味ありません。 このなかに宇宙人、未来人、異世界人、超能力者がいたら あたしのところに来なさい。以上。 あ、あと水虫です。」 一同「触んなや。」
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/6044.html
ハルヒ「レジェンズを探しに行くわよ!キョン!」 キョン「一体なんだ、そのレジェンズとか言うやつは」 ハルヒ「まあ、レジェンズについて知りたかったらウィキペディアを見るといいわ!」 俺が確信を持って言えるのは夏休みの時、レジェンズ 甦る竜王伝説 というアニメが再放送されていたということだ。 妹はきゃあきゃあ言いながら見ていたが、ハルヒときたらわざわざいるはずもないウインドラゴンやらを探そうというのだ。 あのアニメがこの地区で再放送されなきゃ良かったと思った、わざわざ特番組むなよテレビ局。 ハルヒ「何ブツブツいってるの?言っとくけど、本物を見つけるまで探すのよ!」 キョン「やれやれ」 みくる「キョン君、れじぇんずってなんですかぁ?」 キョン「ああ、それはですね・・・」 俺は朝比奈さんにレジェンズをウィキペディアで教えてあげた、シロンやランシーンといった、レジェンズの画像も見せてあげた。 朝比奈さんはシロンとランシーンをみるなり、 みくる「ふぇぇぇ、過去にはこんなモンスターがいたんですかぁ?」 キョン「大丈夫ですよ、これは単なるおもちゃやアニメの中での話です」 みくる「ふぅ、よかったです」 ハルヒ「ちょっと!みくるちゃんにいないなんて言わないでよ!本物がいるかもしれないじゃない!」 いたらそれでいて永久にソウルドールの中で眠っていてもらいたいね。 古泉「でも、いないという可能性は否定できませんよ」 さらっとそういうことを言うな。 古泉「涼宮さんは願望を実現する能力があります、もし彼女がレジェンズがいて欲しいと願ったら・・・」 キョン「バカな、俺も子供のころ一時期レジェンズにハマったが、今じゃあんな物によく興味が沸いたな、と思ってるさ」 俺が古泉とこそこそ話しているのに気付かなかったのか、ハルヒはカバンから何やらゴソゴソと取りだしたのはなんとあのレジェンズを召喚する為の道具、タリスポッドだった、どこで見つけてきた、そんなもの。 ハルヒ「リサイクルショップで500円で買ってきたのよ、大丈夫よ、ちゃんと人数分あるから!」 どこが大丈夫なんだ。 ハルヒ「いい?レジェンズはソウルドールという結晶に封印されているのよ、たぶんそれは何処かに封印されていると思うから、次の土曜日に駅前に集合ね!」 俺は貰ったというより、押しつけられたと言ったほうがいいタリスポッドをカバンの一番奥に入れて、そのまま部室を後にしようとした、が、俺の制服の裾を、長門が引っ張っていた。 キョン「どうした?長門?」 長門「レジェンズは実在する」 キョン「ま、まさか、長門、お前最近ゲームにハマってきたからって、それはないだろう」 長門「いる」 俺は長門の、「いる」という言葉にビビった、確かに、長門は幾度もなく俺のピンチを救ってきた、こいつがいると言ったら、ホントにいるような気がしてならない。 キョン「まあ、探してみていないか調べるぞ」 長門「・・・・・・」 気のせいだろうか、長門の顔が少し寂しそうに見えた。 そして、土曜日がやってきた!・・・・・・来なくてもいいのに。 俺は約束通り駅前に集合した、案の定。 ハルヒ「遅い、罰金」 一番遅いのは俺だった、どうやったらこの三人より先に来れるのだろうか、それが知りたい。 そして、じゃんけんで班を決めた、俺はハルヒと一緒の班で、後の三人はその三人で班になった。 俺はハルヒに連れられ神社にやってきた、何故神社なんだ。 ハルヒ「ソウルドールって、案外簡単に落ちてる物じゃないのよ、こういう所に封印されている事が多いのよ」 この神社は何時からレジェンズ封印されているソウルドールの在りかになったのだ、ここはただの神社のはずだぞ。 そして、30分も探したが、神社にソウルドールは無かったようだ、当たり前だが、そんなもんが封印されてたら今頃誰かが取っていってるはずだ。 ハルヒ「おっかしいな」 石の上で跳ねながらそう言った。 キョン「諦めて帰ろうぜ」 ハルヒ「はぁ!?やる気あんの!?」 キョン「やる気とか、そういう問題じゃないだろう」 ハルヒ「せっかくタリスポッドを買ってきたのに」 キョン「俺・・・帰っていいか?」 ハルヒ「もう一か所だけ、探してないところを探してみる」 しょうがない、もう少し付き合ってやるか。 ハルヒに連れられて来たのは、神社の裏にあった小さな祠だった。まさかその祠の中を探すんじゃないだろうな。 ハルヒ「ここに無かったら来週もやってやるわ」 来週もやるのかよ。 ギィーと古臭そうな音がして、祠の扉はたやすく開いた。 ハルヒは嬉しそうに飛び上がり、 ハルヒ「見つけたわ!ソウルドールよ!」 俺はこんな所におもちゃを置いた奴を憎むね、誰かが隠して忘れただけだろ。 ハルヒ「はい、これはあんたにあげるわ、あたしは他のを探すわ」 こんなもんを押し付けられても俺は嬉しくもないぞ。 ハルヒと言おうと思った時、ハルヒが俺を殴った。 キョン「何をす」 ると言おうとした時、ナイフが後ろの木に刺さった、誰だ、こんな物騒な物を投げたのは。ともかく、ハルヒには今回だけは感謝しよう。 そこにいたのは、思いもよらない人物だった。 朝倉「おしいわね、もう少しでそのソウルドールはあたしの物だったのに」 死んだはずの朝倉涼子がそこにいた、いや待て、この状況は何だ? ハルヒ「キョン!絶対にそのソウルドールは渡さないでね!」 こんな物を欲しがるのに何故俺を殺そうとした、朝倉は甦った時に気が狂ったのか? 朝倉「そのレジェンズは貴女達にはもったいないわ、あたしが使う」 キョン(ダメだこいつ・・・早くなんとかしないと・・・) ハルヒ「キョン!あんたのタリスポッドでレジェンズを召喚しなさい!きっと勝てるわ!それと、召喚する時はリボーンと言って、戻す時はカムバックと言うのよ!」 召喚など出来るはずも無いと思ったが、一応やることにした、ハルヒのご機嫌を損ねたら閉鎖空間が出来てしまうからな。 キョン「リボーォォォン!」 俺は何も出てこないというオチを期待していたのだが、そうもいかなかったようだ。 キョン「!?」 ハルヒ「!?」 朝倉「な、なんですって・・・」 俺のタリスポッドから召喚されたのは、飛行帽を被り、宝石がついた手袋をはめた、純白の羽を持つドラゴン・・・。 ウインドラゴンのシロンだった。 続く
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/2502.html
さて紹介しよう。 新・長門有希である。 どこら辺が新しいのかは俺にも良くわからない。俺の隣にいる古泉も良くわかっていないようだ。 時に長門よ、自分ではどこら辺が変わったと思う? 「・・・脳の各所でいくつかの変化が発生している。それ以外は不明。ただ・・・」 「ただ?」 「性格、趣向等が確実に変化している可能性がある。残念ながら自分では観測できない」 つまり、お前が朝比奈さんみたいな愛らしくちょっとおっちょこちょいな未来人のようになったり、ハルヒみたいな迷惑極まりない 核融合ロケット女のようになったりしてる、ってことか? 「それはない」 長門はやんわりと否定し 「しかしながら、二人が持っている性格が確実に私に影響を及ぼしている」 いつにもましておしゃべりな長門はさらに言葉を紡ぎ 「これはある種の『自立進化』ともいえる。情報統合思念体にとってはある意味喜ばしきこと。 私にとって喜ばしきものかはまだ不明。これから精査が必要だと思う。まぁ、たいした問題では無いと思うけど」 そうかい。長門がもうちょっと外向的な性格になるんなら、それはそれで良いかも知れないな。 「そうかもしれない。それより」 なんだ。 「おなかの中身までは分離時持っていくことが出来なかった。かなりおなかが空いた。ちょっと食堂に行ってパン買ってくる」 来る?と言って長門は俺と古泉を見たが、ついてこないと判断したのかそそくさとドアを開けて行ってしまった。 取り残された俺と古泉、頭をねじ切らんばかりの勢いで捻る。 「長門の言動が変わった?」 「そのようです。まぁ、もうちょっと観察しないとなんともいえませんが。それより・・・」 そうだ、みるひ(仮)はどうなったんだ・・・っておい。 何だこいつは。 「長門さんが抜けたことで、涼宮さんと朝比奈さんが残りました。このみるひ(仮)さんは二人の融合体と見るべきでしょう」 そりゃそうだよな。 「にしてもまぁ・・・二人が融合したらこんな風になるんだな」 先ほど怪しい光を放ちながらモゴモゴ蠢く物体Xと化していたみるひ(仮)だが、現在は落ち着いて普通の人間もとい超絶美少女に変化していた。 黄色いカチューシャをつけたセミロングな栗色の髪に、愛らしい小さな口。そして巨乳。 ああ神様、どうか彼女には朝比奈さん譲りの優しく、ちょっとおっちょこちょいな性格をお与え下さい――! 「ほれはにゃいとおもふ」 ? 「長門さん、お帰りなさい」 「たふぁいま」 部室の戸口を見ると、長門が帰ってきていた。早いな。 アンパンを口にくわえ、ただの茶色い塊と化している袋詰めにされた大量のパンを抱えながら。 「どうしたんだそれ」 長門は食っていたあんぱんを小さい口に一気に詰め込み、ろくに噛まずに飲み込んで―――って! パンをのどに詰まらせて悶絶していた。 あの長門が、である。 「おい、水だ水!」 あわてて古泉はペットボトルの水を長門に投げてよこす。 見事に空中キャッチし、急いでふたを開けて苦しそうにグビグビと飲む姿は全然長門らしくない。 つーか、長門におっちょこちょい属性は無かったはずだ。 「・・・っはぁ・・・。古泉君、ありがとう。このパン?購買が閉店時間で見切りセールをやってたから大量に買ってきた」 食えんのか。見た感じ2、3キロありそうなんだが。 「私にとってこれくらいは朝飯前」 「ちゃんと栄養のバランス考えろよ」 「わかってる。心配ない。それより」 何だ。自分に変化が起こってるのやっと判ったか? 「いや。普通どおりだけど。そうじゃなく、キョン。あなたがさっき彼女に対して言ってたこと」 はて。優しくちょっとおっちょこちょいな性格でありますように、っていう祈りがどうかしたか? 「二人は完全に融合している。そんな都合のいい性格になるわけが無い」 ふん、とでも言いたげな表情の長門は 「主体涼宮ハルヒちょっと朝比奈みくる、な性格になるかと思われる。不満?」 さらにぶー、と一瞬口を膨らませ 「それに、さっきからあなたと古泉君の様子がおかしい。なんで半笑い?」 半笑いどころで済んでいたか。てっきり完全なるニヤケ顔になってるかと思ってたんだが。 てか、お前、自分がめちゃくちゃ変化してるのに気がついて無い? 「私はいたって普通のつもり」 「そうですか。これはこれは・・・以前の長門さんをビデオに録っておくべきでしたね」 「同感だ」 怪訝な顔をしながら首をかしげる長門。 「・・・すまない。以前の私はどんな風だったか、具体的に教えて」 俺と古泉はあらん限りの「以前の長門像」を叩き込んだ。 無口で内向的で、いつも本ばかり読んでる宇宙人。 だけど必ず困ったときは助けてくれる宇宙人。 迷惑ばかりかけてた俺とハルヒと朝比奈さんと古泉。 しかしながら、うんうんとか言いながらも、今にもはてなマークが頭上に飛び出しそうな顔となっている長門。 「どうやらお前が覚えてる記憶と、俺たちが覚えてる記憶とでは大分違うようだな」 「大まかなアウトラインは同じの様だけれど」 「・・・ともかく、感謝してる」 「たしかに・・・私はあなたたちを助けてきた」 長門は言葉を紡ぎだした。 「だけど、殆どが私のミスで起こるか、最初から不可避のものだった。だから、お礼なんていい。でも・・・」 長門は頬を赤らめ、ばつが悪そうに頭をかき 「こう面と向かって言われると、ちょっと照れちゃうな・・・」 俺はお前に惚れたぞおおおおおおおおおっ!!!長門おおおおおおぉぉぉ!!!! とは口が裂けてもいえない俺。 「しかし、そんなキャラだったのか私は」 「ええ。覚えていませんか?」 「恐らく私の記憶中枢、・・・もしくは、私を定義付けている基底現実内の情報まで書き換わっているのかもしれない。確認をとる。少し待って」 長門はかくん、と首をもたげて宇宙的な何かと交信を開始した・・・かと思ったら、すぐに元に戻り、部室のドアを開けた。 「こんにちは」 喜緑さん、お久しぶりです。 「お久しぶりです。長門さんからの呼び出しで来たんですが・・・?」 「私の様子、何処かおかしいか精査してもらうために呼び出した。何処か変?」 明らかに困惑している喜緑さん。 何やら小声で俺に 「あの・・・長門さん・・・ですよね?」 と怪訝そうな顔で聞いてきたが、多分そうですとしか答えるほか無く、さらに 「おかしなところは無い。そんなに私が不満?」 と、ぶーと頬を膨らませる長門を見て抱腹絶倒の装いを呈し始め、ついに 「これは・・・っ・・・流石に・・・ないです。ないですぅ!ないですぅぅぅ!!」 と笑い転げ回りだした喜緑さん。大丈夫か?って俺も大爆笑しかけてるわけだけどさ。 「そんなに変?」 ああ。変だ。俺は萌えまくりで嬉しいがね。 「僕の恋敵が増えたようですね」 黙ってろガチホモ。 「そう。そこまで変だとキョンが言うのであれば、情報統合思念体内にある私の構成情報を上書き初期化するけれど」 「無駄無駄無駄ァですぅ・・・!!ひぇっひぇっっひっく」 横隔膜痙攣を起こしシャックリまで出すほど笑いまくる喜緑さんは 「・・・っ!既に長門さんのバックアップを含めた構成情報はあっ、、完全に今のっ長門さんのっ・・・ひぇっ!データを元としたものと置き換わってるんですぅ」 どういうことですか。 ・・・と無駄なようだ。喜緑さんは笑いすぎて呼吸もままならなくなってる。そのうち笑い死ぬんじゃないか? この神様的宇宙人に死というものがあるのかは不明だが。 「恐らくです」 出たな解説員古泉。 「長門さんははじめからそういうキャラクターであった、という風にこの時間平面上の情報が書き換えられているのでしょう」 判らんぞ、もっと平たく言え。 「涼門みるきさんですが、彼女もまた同じように時間平面上の情報・・・主に来歴ですが・・・が完全に書き換わっていたはずです。涼宮さん、朝比奈さん、そして以前の長門さんとは似ても似つかないような来歴に」 そういや雨乞いしたり、ハゲの頭にオリーブオイルを塗りたくったなんて話は未だかつて聞いたことが無かったな。 「この長門さんにも同じことが言えます」 ・・・そうだな。よく考えればそうだ。 「だがな、喜緑さんはともかくなぜ俺とお前は元のハルヒも朝比奈さんも、長門のことも知っているんだ。書き換わるなら俺たちが覚えてるようなことも全部書き換わらないとおかしいだろ」 「それもそうですね。ですがあなたは既に同じようなことを経験している筈です」 とスマイル青年。 「・・・あれか」 長門が世界を作り変えちまい、俺以外の奴らが皆それぞれ別の人生を植え付けられて生活することになっちまった、あの12月18日。 「長門さんに必要とされていたから、貴方だけ時間平面の改変の影響を殆ど受けなかった。今回も、貴方がキーとして必要とされたから、時間平面の改定の影響を殆ど受けなかった」 「おい、今回に限ってはお前もだろう」 「たぶんそれはですね」 古泉は髪をガッと大げさに掻き揚げるしぐさをして 「貴方と僕は運命共同体だからですよっ!」 そうほざいた。 ・・・そろそろ肉塊に変えとくべきだろうか、なあ長門。 長門? 「私がキョンを必要として・・・確かにそうだけれど・・・必要・・・私にとって・・・キョン・・・キョン・・・」 頬どころか耳まで赤くなってやがるぞ、長門。 ああもう萌えるなぁ。 そうそう、長門以外にも別の萌えるべき存在が居たんだっけか。 俺の背後に。 どうやら覚醒モードに入ったようで、ふるふると体を震わせ静かなる唸りを上げていたかと思ったら 某巨神兵よろしく不気味なほどゆっくりと目を見開いた。 「ちょっとうるさいんですけど・・・あれ、ってここ何処?なんであたしここにいるんですかぁ?お腹が空きましたぁ、キョン」 やれやれ、また良く判らんのが出来ちまったようだ。 前 次
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip/pages/1116.html
第二章 俺の安らかな眠りを妨げる者は誰だ。 目覚まし時計が朝を告げる音を軽やかに鳴らす。 朝特有の倦怠感と思考の低下は、俺の1日の始まりである。 不機嫌な状態で居間へ下り、テレビを観てハッとする。 「8 45」 あれれー? 急いで洗顔を済ませ、歯を磨き、着替えて愛車にまたがる。今日は朝飯抜きだ。 「待て。」 「あ?」 振り返ると1人の男がいた。俺の全神経が集中する。この自嘲的な笑みが憎たらしい。 こいつはいつぞやの俺と朝比奈さんの邪魔をした未来人っぽい奴。 「生憎、俺は男に興味は無いのだが。」 「忠告しに来ただけだ。死にたくないなら、今日は行くな。」 「お前を信用出来ない。お前は俺の敵だろ。」 「知るか。俺の敵は朝比奈みくるだ。」 「朝比奈さんは、俺の見方だ。その敵は俺の敵でもある。」 「まあいいさ。規定事項で近日中にお前は死ぬことになっている。」 ますます嫌な事言うな。「俺はその規定事項を破る為に来た。 お前の存在が与える影響は大きい。お前は未来にとって必要な鍵だ。失うわけにはいかない。 信じる信じないはお前の勝手。俺は勝手に動く。」 そう言ってあいつは俺に背を向け、どこかへ消えた。 駅前に到着する頃には、当に9時を過ぎていた。 「あんた、遅れたら死刑だって知ってる?」 ニゲタイ。デモ、ニゲラレナイ。 目の前の鬼は、表面上は笑顔を取り繕っているが、体から放つオーラが半端じゃない。 「さぁ今日は沢山食べるわよ~♪」 あぁ、不況が続く。 古泉が小声で話し掛けてくる。顔が近い。 「長門さんに頼んで、今日はあなたと涼宮さんを離します。事態が収まるまで続けますよ。」 いつ終わるんだよ。一生はないよな。 「大丈夫。人の記憶は短いですよ。彼女も直ぐ忘るはずです。」 その後ハルヒは、飯まで食いやがった。俺の金で。 「いいじゃない。あんたも食べてるし、遅刻した罰よ。」 それは目覚ましの………もういい。悲しくなる。 さて、くじ引きの時だ。古泉によれば、長門の力で俺とハルヒを離すらしいが…… 「では、僕から。」 古泉はそう言いながらくじを引く。 「印付きです。」 「………」 無言で長門が引く 「印付き。」 そう言い終えると飲みかけのサイダーを音も無く吸い出す。 「次はあたしね♪」 ハルヒが引く 「印無しよ。」 「じゃあ、次は私が。」 朝比奈さんが引く。 くじを前に悩む顔が可愛らしい。何引いたって結果は同じさ。 「印付きです。」 朝比奈さんは柔和な顔で俺にくじを見せた。 とても和みmあれ? 今回はハルヒと一緒。確か俺はハルヒ以外と組むはずなのでは? 古泉を見ると口をあんぐりさせ、長門の方を見ている。 一方、長門はといえば無表情のままだが、どこか情緒不安定に……見えないな。 「さぁ!!行きましょう。」 太陽も引っ込むような笑顔で、ハルヒは俺の手を引っ張り、外へ出ようとする。 その姿はまるで、クリスマスイブにプレゼントを買って貰えるとはしゃぐ、子供のようだった。 俺は金が少ない。会計は古泉に任せてとんずらする事にしよう。 外へ出た俺とハルヒだが、特に行く所も無く、 「何処行くか?」 「ん~あんたの好きな所でいいわ。」 「じゃあ、ゲーセンでも行くか。」 ハルヒしばらく考えた後「いいとこ目つけたわね。そういう場所には宇宙人とかがいるのは定番だし。」 どこが定番なんだろうか。やけに上機嫌なハルヒはドカドカと道を歩み出した。 どうでも良いが、街のど真ん中で鼻歌は止めてくれ。一緒にいる俺まで恥ずかしい。 すると、急に俺の携帯が鳴りだす。古泉からのメールだった内容は… 『先ほどはよくも、逃げて頂きましたね。代償は大きいですよ。 ところで本題ですが、詳しい話は後ほどにでも 現在はお2人を後ろから監視してます。 何かあったら直ぐに駆けつけますので御安心を P.S 良いデートを。ただし、密室は避けること。』 なにが『良いデートを』だ。殴ってやりたいね。いや、殴ってやる。 まぁ密室は避けるべきだな。俺の命に関わってる事だし。 だいたいこんな事になったのもハルヒの妄想電波のせいであり…… 「何してるの?早くついてきなさいよ!」 やれやれ、死のカウントダウンが始まったようだ。 助けてくれ親愛なる仲間たちよ。 十分後、近くのゲーセンに着いた。ハルヒは真っ先に近くのゲームをし始める。 ふと、俺の携帯が呼び出しをしていることに気づく。 長門からだった。 「長門か?」 「トイレで待つ。」 俺は曖昧な返事をして電話を切り、トイレへ向かう。ハルヒに言う必要はない。 トイレの前に古泉はいた。嫌な予感がする。 にやけ面が口を開く。 「どうも。」 「説明してもらおうか。」 「それはですね…」 一呼吸おき、 「や ら n」 「古泉。お前が泣くまでッ殴るのを止めないッ。」 「何もそこまで……アッー!!」 トイレの中で古泉を張り付けにした後トイレの外で長門と朝比奈さんに会う。 「あれ?古泉くんは何処ですか…?」 今頃トイレでキリストになってますよ 「きりすと?」 首を傾げて朝比奈さんは言った。今更だが、朝比奈さんの知識は俺達とかなり異なるみたいだ。 だがしかし、未来人として、歴史を知るという事は重要ではないのか? これがゆとりの力だろう。 「簡単に言ったら救世主ですね。確か一度死んで復活したとかしないとか。」 「宗教的ですねぇ。」 宗教ですからね… 「説明する。」 キリストならもう俺が話したが? 「そちらの方をして欲しい?なら、説明する。 彼が何故救世主と崇められたのは、彼の弟子のユダの裏切りにより…」 「もう結構です。」 「……そう。」 「要点だけ言ってくれる?」 キリストの話じゃないぞ 「結論から言う。私の力が働かなかった。」 「どういう事だ?」 長門の力が働かない? 急進派の陰謀で俺を殺すためとか? 妨害電波の発生か? 四次元ポケットの故障か? 「どれも違う。これは涼宮ハルヒが求めたからである。彼女の力が私の力を上回っただけの事。」 ハルヒが望んだ? 「そうです。彼女がそう望んだのです。羨ましいですね。私もあなたと一緒にいt……ぎゃあ。」 古泉。てめぇ、いつ抜け出しやがった? 「あ、あああ朝比奈さんに助けて頂きました。」 「ふぇ…いけませんでしたか?」 そんな事御座いません。あなたの決定は俺にとって絶対ですからね。 「で、俺はどうすれば良い。」 「………特に無い。」 「ただし、付かず離れずを保って下さい。」 付かず離れず? 「涼宮さんの興味をあなたに引きすぎてもダメ、逆も同じです。」 どうして? 「つくづくあなたは鈍感ですね。本当は気づいているのでは?」 古泉の溜め息が響く。 「………のろま。」 長門まで何を。しかし、まっったく解らん。 「乙女心ですよっ。男のキョン君には、解らないんですね♪」 男の古泉が乙女心を知っているのが不思議なのだが。 朝比奈さん…そんなに嬉しそうに言わないで下さいよ。馬鹿って言われてる気分です。 「これ。」 長門は小型のチップを手渡した。 「発信機。見失っても安心。」 「では、これで。」 3人は俺に会釈(長門は一瞥)をして出て行った。 何故かは知らんが「のろま」という言葉だけ俺の耳に残る。 俺は亀ではない。 渋々ハルヒの所に戻る さて、ハルヒは何か景品を取ったらしく、 「これ、要らないからあんたに一個あげるわ。携帯にでもつけなさい」 俺はハルヒからツキノワグマのぶーさんのキーホルダーを貰った。 「変な趣味だな」 「う、うっさいわね。嫌なら返してよねっ。」 ハルヒから不機嫌オーラが出てくる。 ここは、受け取るべきだな。 「いや、有り難く頂きますよ団長さん。」 「そっ…それならいいのよ。初めから欲しいって言えこのバカ!!」 ハルヒは怒ったような、悲しいような、だけど嬉しそうな…とにかく、滅茶苦茶な表情をしていた。 本当、何が言いたいのかね。 「さぁ、次やるわよ!」 ハルヒはいつもの表情に戻るや否やクレーンゲームに興味を示した。 まぁその辺の詳しい事は割愛させて頂く。 ハルヒはまたぶーさん人形をゲットし、他のアーケードゲームに興味を示す。 勿論、俺も参加する。まぁ、その辺はどうでもいい。問題はその後だった。 とりあえず、長門達が見つかった。 ハルヒが「プリクラを撮るわよ!」とか言って中に入ろうとしたからだ。 普通、誰か居るの確認するだろ。 その後古泉が、「おや?奇遇ですね」などと抜かし、すたこらどっかに消えて行った。 「やっぱりね。」 何が「やっぱりね。」なんだ? 「今までずっとつけられてたのよ。気づかなかった?」 生憎、俺には気を探る能力や、どこぞの宇宙人が持つスカウターは持っていないからな。 「今までの全部見られてたのよ!!恥ずかしいったらありゃしない!!」 「おお、キョンと涼宮じゃないか。」 谷口がいた。変な奴に見つかったな。 「遂に2人でデートか?アツアツだねー。」 「な、何よ。冷やかしに来たの?」 ハルヒは頬を赤らめた。俺だって恥ずかしい。 「あら、その手に持っているの何?」 「あぁこれか。早急拾った………なぁ。」 「どうしたんだよ。」 谷口は俯きながら何か躊躇するような姿勢をとる。 「俺ら友達だよな。」 「は?当たり前だ。」 「涼宮は?」 「一応一緒のクラスだし、友達でもいいんじゃない?何なら下僕にしてあげてもいいのよ。」 ハルヒはニヤリと小悪魔みたいに微笑む。 「ハハハ…お前らしいや。ホント良かったよ。お前らが仲間で。」 「お前何言ってるんだ?悩み事ならh……!!?危ねぇ!!避けろハルヒ!!」 谷口の手が光る。あれはナイフだ。それがハルヒに向けられる。 「……え!?」 間に合え!! 俺はハルヒからぶーさん人形を引ったくり、ハルヒを突き飛ばす。 そしてそれを谷口へ向ける。 ナイフはぶーさん人形に突き刺さった。 「谷口ィィィ!!!てめぇ……よくもッ!!」 俺は吹っ切れた。渾身の力で谷口へ殴りかかる。 その手を誰かが止める。古泉がいた。 「いけません。」 止めるな。こいつはハルヒを……… 俺は必死に足掻く。 「彼を見て下さい。もう何も出来ません。」 谷口は自分の手を見て目を疑っていた。 「AWAWAWA……俺……何してんだ?何で……何でこんな事を………ゴメン………ゴメン。」 「落ち着いて下さい。さぁ、ここは人目につきます。外へ。」 横で呆然としていたハルヒを抱え、外へ出る。 その後ハルヒはぐったりとしていたが直ぐに眠りに落ちた。 古泉が誰かに電話をしている。どうせ機関の誰かだろう。 程なくして車が来る。森さんだった。 古泉は谷口を車に乗せる。 「わたしも行く。」 長門も車に乗り込み、車は発車する。 「何で警察じゃないんだ?」 谷口は立派な殺人未遂犯である。警察に突き出すのが当たり前だ。 「気付きません?」 「……ナイフ。」 朝比奈さんが感づいたように呟く。 「まさか谷口……」 その先は言えなかった。悲しすぎた。言うに耐えなかった。 「ええ、ご想像の通りでしょう。」 また車が来た。今度は新川さん。 「涼宮さんとどうぞ。家まで付き添ってあげて下さい。」 ハルヒを抱え、車に乗る。 「古泉。」 「何でしょうか。」 「お前の力凄いな。俺の本気が簡単に止められたのは初めてだ。」 「ふっ、知ってますか?オカマやゲイが強いのは定番なんですよ。」 不思議な名言を残し、古泉と朝比奈さんは手を振る。 「宜しいですかな?」 「お願いします。新川さん。」 車は発車する。 「キョン……」 起きたかハルヒ。 「うん……助けてくれてありがと。」 ハルヒはまだ朦朧としている。 「大丈夫だ。俺がついている。」 ハルヒは急に瞼を全開にして、赤くなる。 「そ、それって…」 「何たって俺はSOS団の雑用係だからな。」 ハルヒは機嫌を損ねたようで、俺のふくらはぎをつねる。 俺何か悪い事言った? 「目覚めたなら頭どけてくれるか?膝枕は意外に疲れるんだ。」 「……バカキョン。」 すると、俺の頬に生暖かい物体が触れた。 ミラーに写る新川さんがにやけていた。 「………お礼よ。」 「………そっか。」 あ、自転車忘れた。 第三章へ
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/4059.html
人物設定がやや変化した団員。 しかしなぜかSOS団の活動は当たり前の様に行われている。週末のアレもまた然り。 ここ数日の観察で、どうやら人によって変化度(ハマり度)に差がある事が分かった。 朝比奈さん>古泉>長門>ハルヒ=俺って感じだろうか。 上位2名が何やら密談を交わしている。 「…朝比奈さん。」 「…ええ、近いですね。」 何がだアホ共…。 「(ちょっとキョン…なんかみくるちゃんと古泉君変よ…。)」 「(良かったじゃないか…変なのは大好物だろう?)」 「(身近過ぎるのはちょっとキツいって事が分かったわ…。 それにあんな「不安定な年頃」みたいのを求めてる訳じゃないのよアタシは…。)」 他が異常でハルヒがまとも。これこそ真の異常事態かもしれん。 「(いいキョン?有希?絶対どっちかがアタシと同じ組分けになるのよ? 今の二人と会話を続けられる自信がないわ…!アタシを一人にしないで、泣くわよ!?)」 「(お…おう、わかった…。)」 「さ、さあ、ちゃっちゃとクジ引いて探索行くわよ!せーのっ」 ハルヒ・色なし みくる ・色なし 長門 ・色あり 古泉 ・色なし キョン ・色あり 「(こ、このバカキョンーっ!!!)」 スマン、耐えろハルヒ…。 ―― 「図書館行くか?他に希望があるならそっちでもいいぞ。」 「…図書館。」 「おう、そうしよう。」 (コクリ) 「…それでだ、歩きながらでいい。分からん事がいくつかあるんだがな。」 「…何?」 「今回の件も多分ハルヒの奴が原因なんだろうって事はなんとなく分かる。 だがちょっと中途半端な気がしないか?あいつにしてはさ。」 「……。」 「あいつが小説に影響受けて『SOS団にはバトル要素が足りなーいっ』とか言い出すならまだ分かる。でも小説もフレイムヘイズも知らないって言うんだぜ?その割にはメロンパン食ったりうるさい×3言ったりしてる。 …そこが分からない、さっぱり分からない。」 「――実に面白い。」 「…ノリがいいな長門。」 「…おそらくは、彼女が断片的な知識しか持たないからだと思われる。」 「どういうことだ?」 「例えば、アニメ。眠りに付けない彼女がテレビで暇を潰そうと考えた。 無作為にチャンネルを変更している中で、「灼眼のシャナ」の1シーンを目にした。 メロンパンを食べているシーン、照れながら坂井悠二をうるさいと罵るシーン、そして戦闘のシーン。」 「…なるほどな。それで名称は記憶に無いが印象や設定のいくつかだけ頭に入った、と。」 「そう。そしてその僅かな情報の中には、「敵の存在」、「意中の男性の重要度」も含まれると思われる。」 「…なんか怖い事言ったな今。」 「あなたの携帯電話。」 「…?」 「毎晩自動的にフル充電されている。」 「は?古泉との電話を盗聴でもしたのか?ありゃ俺の妄言で…」 「零時迷子」 …本気で…、言ってんのか…? 「彼女はおそらくこう考えた。『バトル要素はアリだ』『バトルするには敵が必要だ』 そして、『主人公が好きな相手には何かとんでもない秘密があるべきだ。』」 「…好きな相手うんぬんは置いておく。たかが携帯がフル充電される事のどこがそんなに重要なんだ?」 「今は接続されているのが携帯電話のバッテリーという小容量の物だから。 そこに別の、もっと容量の大きな物を接続させたとしたら。」 「……………。」 「各国が頭を悩ませているエネルギー問題を全て解決に導く事のできる代物。 そしてそれは、争いの種ともなり得る。」 ――近々あなたを狙う輩が現れるかもしれません。―― …あれは古泉の妄想じゃないってのか…!? 「――という電波を受信した。」 「オイィッ!!」 ―― 「きょ、今日はなんにも見つかりそうにないしそろそろ駅前に戻ろっか。ね、…みくるちゃん?古泉君?」 「いえ、おそらく近くにいるはずなんです。でも気配が曖昧…何かの自在法なのかなぁ?」 「ええ…可能性はありますね。」 「うぅ…。孤独だわ…みんなと一緒にいるはずなのに今私は孤独…。――ん?」 古・朝「「――!!」」 ―― 「――来た。」 「ん?何が…」 ――!? 閉鎖空間……いやこの色は…!! 「封絶。」 「…って、さっきのはお前の電波話なんだろ!?」 「それは携帯電話の話。涼宮ハルヒが目にし興味を持ってしまった以上、敵はいる。」 ―― 「ハハッ、この気配は『雁ヶ音』か。楽しめそうだなマリアンヌ。」 「『赤光』は私の相手です。邪魔はさせないのです。」 「―――退屈――満たす―――――私を――『万象』―――――」 「……マリアンヌって何だい?」 「何を言っている。マリアンヌならここにいるじゃないか?ねえ、マリアンヌ。」 「ハイ、ご主人様。」 「今の明らかに裏ご……いや、無粋な突っ込みはやめておこう。」 くくっ、僕が何かした覚えもないし、涼宮さんかな? だとしたらキョン、君も一枚噛んでいるのかい? つづく
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/720.html
キョン「なぁ、しょっぱなの自己紹介のアレ、どのあたりまで本気だったんだ?」 ハルヒ「『しょっぱなのアレ』って何?」 キョン「いや、だから宇宙人がどうとか」 ハルヒ「あんた宇宙人なの?」 キョン「んなわけねえだろ!!お前のその自己紹介のせいで誰一人俺の自己紹介を覚えてねえんだよ! 俺より目立ちやがって!絶対ゆるさん!」 いきなり怒鳴られた、後から聞いた話によると。 キョンは目立ちたがり屋で、しかも極度の負けず嫌いらしい。 それからというものの、キョンはアタシのすることにいちいち突っかかってくるようになった。 こうしてアタシとキョンは出会ってしまった。 ある日、次の時間は体育で着替えなければならないというのにクラスの男子はなかなか教室から出て行かなかった。 アタシはかまわず男子達の目の前でセーラー服を脱いでやった、すると女子の「キャー」悲鳴と供に一目散に教室から出て行った。 だけどキョンはそこに居た。「俺にもできるぜ?」みたいな顔をして女子の目の前でパンツ一丁になったのだ。 「キャー」という悲鳴と供に女子は一目散に教室から出て行った。 アタシは無視してスカートを脱いだ、 するとキョンは得意気な顔をしてパンツを脱いだ。 キョン「どうよ?」 ハルヒ「どうって…体操着に着替えるのにパンツを脱ぐ必要は無いんじゃないの?」 キョン「お、俺はいつもこうなんだよ!」 そういってキョンは下着をつけずに短パンを履いた。 谷口「おい、キョン。横チン出てるぞ」 キョン「お、俺はいつもこうなんだよ!」 その日の体育で女子の注目の的になったのはブッチギリでキョンとその息子だった。 アタシは何かおもしろいものでも無いかと全ての部活に仮入部してみた。 どうやらキョンも負けじと全ての部活に仮入部していたらしい。 キョン「どうだ?どこか楽しそうな部活はあったか?」 ハルヒ「全然無い。これだけあれば少しは変なクラブがあると思ったのに」 キョン「無いものはしょうがないだろ、結局の所、人間はそこにあるもので満足しなければならないのさ。言うなれば…」 なんかうんちくを語りだした、知的なところをアピールしてるんだろうか。 次の瞬間アタシはひらめいた。 ハルヒ「そうだ!無いなら作ればいいのよ!どうしてこんな簡単なことに気付かなかったのかしら」 キョン「まぁ俺は最初から気付いてたけどね」 そんなこんなでなぜかアタシとキョンは一緒に新しい部活を作ることになった、 そして潰れかけの文芸部室を乗っ取ることに決めた。 放課後。アタシは2年の教室でぼんやりしていた娘を捕まえて部室へ向かった。 ハルヒ「ごめんごめん遅れちゃって、紹介するわ!朝比奈みくるちゃんよ!」 アタシは得意げにみくるちゃんを紹介した。 しかし、キョンも新入部員を連れてきていた。 古泉「はじめまして、古泉一樹です」 キョン「どうやら俺の連れてきた部員のほうが優秀そうだな」 キョンは勝ち誇った顔で言う、アタシはちょっとムッした、 ハルヒ「見なさいよ!メチャメチャ可愛いでしょ!?萌えって結構重要な要素だと思うわ」 キョン「なんの!古泉もイケメンじゃないか!これだけのいい男はなかなか居ないぜ?」 ハルヒ「それだけじゃないわ!ほら!アタシより胸でかいのよ!ロリで巨乳!完璧じゃない!」 アタシはみくるちゃんの胸をモミながらそう言った みくる「ひぇ~っやめてくださぁ~いっ」 キョン「なんの!どうだ古泉の奴けっこうでかいんだぜ?ほら」 なんとキョンは古泉のイチモツをモミだした 古泉「な、なにをするんですか!?」 キョン「ほ~らドンドン大きくなってきた、まだまだでかくなるぞ~」 古泉「ああっ!はうっ!ううっ!」 キョン「どうだすごいだろうハルヒも触ってみるか?」 古泉「あぁぁっ!」 ハルヒ「わかったわ!アタシの負けよ!やめなさい!」 アタシは暴走するキョンを必死で止めた。 古泉「ハァハァ、ありがとうございます、涼宮さん」 変な声を出すな、息を荒げるな、頬が赤いんだよ気持ち悪い。 こうしてアタシ達の部活はできあがった。 ハルヒ「みんなー!野球大会に出るわよ!」 部活を新設して以来なんのイベントもなく退屈だったので アタシは草野球大会の申し込みをしてきた。 キョン「出るからには優勝するぞ!」 ハルヒ「あたりまえじゃない!」 嫌そうな顔をする他の部員を他所に、アタシとキョンは大乗り気。 野球大会の参加が決定した。 試合当日、初戦の相手は上ヶ原パイレーツ、どうやら優勝候補らしい。 でも楽勝ね。今日はキョンも味方だし。 キョンはどうしても4番サードがいいらしくアタシは1番でピッチャーになった 「プレイボール」 試合が始まった、先攻はSOS団 アタシは初球を2塁打にした、ちょろいもんね。 だけど続くみくるちゃんとユキは見逃し三球三振、そしてキョンの打順がきた。 ハルヒ「キョーン!あんたは打たなきゃ死刑だからね!!」 キョン「誰に言ってるんだ?お前が2塁打なら俺はホームランだ!」 結果は…三球三振。どうやら負けず嫌いだけど実力は無いらしい。 キョンは今までに見たこと無いくらいに悔しがっていた。 すると古泉君がアタシに言ってきた。 古泉「まずいですね、今までに無い大規模な閉鎖空間が現れました」 どうやら古泉君の話によるとキョンは負け始めると閉鎖空間とやらを生み出し そこで暴れまわるらしい、しかもその閉鎖空間が広がりきると世界が終わるとか何とか。 なんて迷惑で自分勝手な…。超常現象マニアのアタシはあっさりその話を信じた。 結局アタシ以外ヒットを打つこともなく打者が一巡した。 その間、マリーンズにはバカスカ点を取られる始末。このままじゃ世界が… 古泉「大丈夫、僕と長門さんに彼にホームランを打たす秘策があります」 古泉君には何か作戦があるらしい。私も秘策を出すことにした。 アタシとみくるちゃんとユキはチアガール姿になって打席に立った。 マリーンズ投手はその姿に動揺してすっぽぬけた球を投げてきた。 結果は三塁打!みくるちゃん、ユキは四球で出塁、満塁の大チャンスとなった。 チアガール作戦は効果テキメンね!!そして2アウト満塁でキョンの打順となった。 古泉「ここで秘策の出番ですね、長門さん」 ユキはバットに何か呪文を唱えてキョンに渡そうとした。 だけどキョンは真っ直ぐ打席には向かわなかった。 キョン「そうか…!おもいついたぞ!ちょっとタイム!」 なんとキョンは例のノーパン体操着に着替えて打席に立った。 隙間から2本目の肉バットをぶら下げて…。 こうしてアタシ達は1回戦で出場停止処分となった。 試合後、キョンはマリーンズの主将と何か話していた。 主将「いい試合だったな、ところでそのバットだが…」 主将は頬を染めながらキョンの2本目のバットを見た。 そして2人は奥へと消えて言った。 「アーッ!アーッ!」 奥から主将の声がいつまでも響いていた。 キョンは帰りにファミレスを奢ってくれた。思わぬ臨時収入があったらしい。 閉鎖空間もキョンの何らか征服感により消滅したらしい。 なにはともあれメデタシメデタシね! キョン「おい!ハルヒ!起きろ!起きろったら!」 キョンの声で目が覚めたアタシは目を疑った。 一面灰色の世界の学校にアタシは居た、たしか家でベットで寝てたはず。 一体何があったの??? キョン「わからない、起きたらなぜかここにいて、隣にお前が寝てたんだ」 学校の周りを調べたがどうやら学校の外には出れないらしい、 とりあえず部室に行くことにした。 キョン「俺が先だ!」 キョンは走って部室に向かった、こんな時まで負けず嫌いな奴ね…。 1人で部室にまで歩いていると、そこへ人型の光が現れた 「やぁ涼宮さん、僕です古泉です。」 ハルヒ「古泉君!一体これはどういうことなの?」 古泉「どうやらここは彼の閉鎖空間の中のようです。どうやら涼宮さんには敵わないと思い始めたことにより作り出されたものでしょう」 ハルヒ「どうすればいいのよ!このままキョンと2人でここで暮らさなきゃいけないわけ!?」 古泉「白雪姫という物語を知ってますか?アレを思い出してください 僕はこれ以上ここにいることは出来ないようですね。では…」 そういって古泉君は消えていった。 白雪姫…ってあの童話の?キスでもすれば戻れるとでもいうのかしら… アタシはキョンの待つ部室へ行った。 キョン「遅かったな」 ハルヒ「キョン…アタシ実は巨根萌えなの」 キョン「はぁ?」 ハルヒ「いつだったか、あんたの短パンからハミ出した肉棒 反則的なほど大きかったわ」 そういってアタシはキョンにそっとキスをした。 キョンは負けじと舌を入れてきた、なんて負けず嫌い、 アタシはキョンの上着を剥ぎ取り体に舌を這わせた。 キョンは負けじとアタシを押し倒し挿入動作に入った。 ハルヒ「あいたたたたっ!無理無理そんな大きいの入らないって 痛いっ!わかったアタシの負け!やめてやめて!」 キョンはふと勝ち誇った顔をした。 …次の瞬間、アタシは自分の部屋のベットに居た。 我ながらなんていう夢を…。 次の日、寝不足の目を擦って学校へいくと キョンはノーパン短パンで席に座ってた。 自慢の息子をはみ出しながら キョン「俺の勝ちだな」 終わり
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/1641.html
【読まれる前に】 本作は長編・『涼宮ハルヒの覚醒』のおまけとなっております。 上記作を未読の方はご注意ください。 「みんな……ありがとう。」 …。 …。 …何で俺達は長門にお礼を言われているのだろうか? 皆を見てみるが皆困惑の表情を浮かべている。 でもそんな事はどうでも良い。 だって…。 長門が今、最高の笑顔で微笑んでいるのだからな…。 …。 …。 …状況が分からない? …。 …。 …安心してくれ。 俺にもさっぱり分からない。 いつも通りの放課後、昨夜みた夢の話をしていた時に突然長門が立ち上がり俺達にお礼を言ったのだ。 しかしさっきも言った通りそんなことはどうでも良い。 長門が微笑んでいる。 それで良いじゃないか…。 …。 …。 …しかしこの後、俺達に予想できない悲劇が起こる…予想出来なかったとしても誰が俺を責められようか…? …。 …。 …。 長門が口を開いた。 「言葉だけでの感謝では足りないと思い料理を作ってきた。」 …。 …。 …時が止まった。 あくまで俺と朝比奈さん、古泉の3人だけだが…。 「有希、何作って来たの?」 「肉じゃが。」 「へぇ~、美味しそうね。」 「今から温める。」 「手伝うわ。」 長門とハルヒはガスコンロへ向かい肉じゃがを鍋に移し温め始めた。 …。 …。 「…集合。」 俺の言葉に従い、朝比奈さんと古泉が俺のそばに来た…2人の顔には悲壮とか絶望とかそんな感じの物が浮かんでいた。 おそらく俺にも同じ物が浮かんでいる事だろう。 …。 「で…何の罰ゲーム何だこれは?」 「…僕には思いあたる事はありません。」 「わたしもです…。」 さっぱり分からん…しかし一つだけ分かっている事。 このままでは俺達の命は長くない。 …。 …。 「とりあえず長門さんに謝りませんか?」 「そうですね…僕達が何をしたのかわかりませんが…謝りましょう。」 「ああ、心の底から謝れば長門もきっと分かってくれるだろう。」 俺達は長門の所へ向かった。 …。 …。 『ごめんなさい。』 …。 …。 俺達は長門に頭を下げた。 …。 …。 …正直に言おう。 頭を下げたどころでは無い…俺達3人は長門に土下座をしていた。 特に示し合わせた訳では無い。 俺と朝比奈さん、古泉は当たり前の様に土下座していた。 俺達がどんなに必死か分かっていただけただろうか? …。 …。 「…意味が分からない。」 「何やってんの?あなた達?」 長門とハルヒは不思議そうな目で俺達を見つめている。 「いや…俺達が何かお前にしてしまったんだろ?」 「今後は僕達一同気を付けますので怒りを収めて頂けませんか?」 「ううっ…お願いしますぅ~。」 …。 …。 「理解不能…私は怒ってなどいない。」 「…だって…ならなぜ肉じゃが?」 「…感謝を形にしただけ…それに肉も沢山手に入ったから。」 ……肉って…たしかミノタウロス? …。 …。 どうやら長門は怒っている訳では無く本当に感謝の証として肉じゃがを作って来たみたいだ。 「じゃあまずはアタシが味見するわね。 団長の特権よ。」 そう言ってハルヒは肉じゃがに箸を伸ばした。 ハルヒ…それは味見じゃ無い。毒味だ。 頼むぞ団長殿。 …。 ハルヒは肉じゃがを箸で口に持っていこうとしたが…口から10cmぐらいの所でその動きが止まった。 …どうしたハルヒ? …。 「あれ…何でだろう…これ以上手が動かないの…。」 ハルヒは手を震わせながら言った…どういう事だ? 「…なるほど。 マッスルメモリーですね。」 古泉はそう呟いた。 マッスルメモリー? 「何だそれは?」 「マッスルメモリー…筋肉の記憶。 涼宮さんはその力…いや、都合の良い頭でしたか…。 …まぁそれにより前回の悲劇を覚えていません。 しかし頭は覚えていなくても体は覚えているのです…これを食べてはいけないと…。」 「なるほど…で、どうなるんだこれから?」 「わかりません。涼宮さんの頭が勝つか…体が勝つか。」 …。 …。 ハルヒの体、すまない。 きっとお前は生きるために今必死で闘っているんだよな…でもハルヒには毒味役としてその役割を全うしてもらわないといけない。 だから頑張れ、ハルヒの頭…。 …。 …。 時間にしたら1分ぐらいだろう。 ハルヒの頭と体の闘いはやはりハルヒの本体とも言える頭に軍配が上がった。 …。 …パク。 …。 次の瞬間、ハルヒはスローモーションの様にゆっくりと倒れ…動かなくなった。 …。 …。 …ゴッドスピード涼宮ハルヒ…。 …。 …。 「はわわわわわわ…」 「や…やはり…。」 「悪夢再び…か。」 長門は呟いた。 「また美味しすぎて気絶した。」 …。 本気で言ってるな長門。 次は…誰だ…? …。 長門はゆっくりと振り向き…その瞳は朝比奈さんを捉えた。 「ひ…ひえええ。」 次の瞬間、朝比奈さんは長門に捕まっていた。 「朝比奈さん!!」 「彼女はもう…駄目です。」 「バカやろう!朝比奈さんを見捨てるのか!」 俺は朝比奈さんを助ける為動こうとした…が…。 …。 …。 朝比奈さん…何なんですかその顔は…。 朝比奈さんは助けに向かおうとした俺に潤んだ瞳でゆっくりと首を振った。 その顔はなんて穏やかな…。 そう、これから自分に何が起こるか理解し、それを受け入れた顔…殉教者の様な顔をしていた。 (…今までありがとう。) 朝比奈さんは唇をそう動かし、肉じゃがに向かい口を開けた。 「朝比奈みくる、ありがとう。」 長門はそう呟き朝比奈さんの口に肉じゃがを入れた。 …。 …。 バタッ …。 …朝比奈さんは倒れ…動かなくなった。 …。 …。 (次は…) (僕達…) 長門はゆっくりと振り向いた。 (次はパターン的に僕でしょうね…。) (いや、そう思わせて俺かもしれん。) (長門さんのみぞ知る…ですか。では僕は左に逃げます。) (わかった。俺は右に。) 俺と古泉はアイコンタクトを終え動いた。 …。 …。 ガシッ …。 …。 次は…俺の番だった…。 まてまて!普通俺は最後だろ! 俺が逝ったら誰がこの後を解説するんだ! …。 バタッ …。 俺は長門に押し倒された。 「あなたには苦労をかけた。ありがとう。」 長門はそう呟き箸で肉じゃがを掴み俺の口元に突きつけた。 俺 絶 対 絶 命 ! (古泉、助けてくれ。2人で協力すればきっと何とかなる。 そこの窓から一緒に逃亡しよう!頼む!助けてくれたら冷蔵庫の中のプリンをお前にやるから!) …。 俺から古泉に向けたアイコンタクト。 …。 …。 伝われ!俺の思い。 …。 …。 …。 ~ここより古泉サイド~ …。 …。 彼は今、長門さんに押し倒され最後の時を迎えようとしていた。 絶対僕が先だと思ったのですけど。 …ん?…彼が何か… …!? …そうですか…分かりました。 …。 …。 『俺はもう駄目だ。せめてお前だけでも逃げてくれ。 そこの窓からなら逃げられる。 みんなの分まで生きろ! 後、冷蔵庫のプリンはお前にやる。俺にはもう必要ないからな…あばよ。』 …。 …。 …ですね。分かりました!あなたの気持ち。僕はみんなの分まで生きます!勿論冷蔵庫のプリンも美味しく頂きますので心配無く! …。 …。 僕は彼に微笑み窓に向かった。 …。 …。 タッタッタッ…バッ! 僕は窓に飛び込んだ。 …。 …。 スコーン 「痛!」 ベチッ 「ぐっ!」 …僕の頭に何かが飛んで来て命中し、バランスを崩した僕は壁に激突した。 振り返ると彼が僕を睨んでいる…。 …。 …。 …本当は分かっていました。 …。 …。 『古泉、助けてくれ。2人で協力すればきっと何とかなる。 そこの窓から一緒に逃亡しよう!頼む!助けてくれたら冷蔵庫の中のプリンをお前にやるから!』 …。 …。 …ですよね。 すいません。 でも…しかた無いじゃないですか…。 …。 …。 バタッ …。 …。 彼が倒れた。 …逝きましたか…次は…僕…。 …。 …。 気づくと窓とドアのあった場所はコンクリートの壁になっていた。 …。 今この部室に生きている人間は僕と…。 「古泉一樹、最後のお礼はあなた。」 …この長門有希。 僕は立ち上がり長門さんと向き合った。 「あなたは私を命懸けで助けてくれた。だから一番美味しい所を。」 なんの事だかわかりません。 ただ分かるのはこのままだと確実な死が訪れるということ。 「残念ですが長門さん、その肉じゃが消させてもらいます。」 「…何故?私はあなたの為にこれを作った。それは不許可。」 「僕に…出来ないとでも思っているのですか!」 僕は両手に力を込めた…大丈夫、力は使える。 「怖い顔…あの時と同じ。 ……たしかに素敵かも…。」 さすが普通の時でも異空間化している文芸部室、力の九割ぐらい使える。 でもやはり自分を光の玉に変える事は出来ないみたいだ。 「でもあなたでは私に勝てない。すぐに食べさせて終わりにする。」 …勝率は…一割の一割以下か…絶望通り越して笑えてきますね…。 「ええ、すぐに終わります。僕が肉じゃがを消してね。」 …だがやるしかない。 「…あの時と同じ。」 長門さんは良く分からない事を呟いた後肉じゃが入りのお椀と箸を持ち、僕に突進してきた。 僕も長門さん…いや、肉じゃがへと向かい突進した。 …。 …あれからどれくらい時間がたったのだろうか? おそらく5分ぐらいだと思うが僕には3時間にも4時間にも感じられていた。 …1分がこんなに長いなんて…。 僕の体中が肉じゃがの汁だらけだ。 …背中の汁が一番濃いか。 長門さんは強い…何よりも素早くて攻撃が肉じゃがに当たらない…とことん当たらない! 「何故そんなに頑張るの?」 …逝きたくないからですよ。 長門さんは肉じゃがを掴んだ箸をなぎ払って…!? …肉じゃがが僕の口を掠めた。 「…おしい。」 あと数ミリで口の中に入っていた…。 僕は右手の光を肉じゃがに向かって投げた……やはりよけられた。 「そろそろ終わりにする…肉じゃがが冷める。」 長門さんは再び僕に突進してきた……箸を僕の口に一直線に…。 ーー!? 僕はとっさに体をズラし口への直撃は避けたが汁が口の中に入った。 「ぐっ!」 視界が歪む…足が震える…汁が入っただけでこれか…。 僕はとっさに手を伸ばし長門さんの持つ箸を奪いとった。 良し…取った! …。 …。 長門さんは僕から飛び退いたあと…。 …。 …。 スタスタ …。 …。 新しい箸を取りにいった…。 …。 …馬鹿ですね…僕は。 「…不思議。箸じゃなくてお椀をその光で狙えばあなたの勝ちだったのに…。」 …まったくもってその通りです。 先ほど口に入った肉じゃがの汁のせいか足が動かない…絶体絶命ですね…。 長門さんは再び肉じゃがを箸で掴み僕に突進してきた。 …。 …。 長門さんの動きがゆっくりに見える…これがドーパミン効果ってやつですか…。 この軌道…そのまま口に入って…即死だな…。 …。 …。 …。 「……。」 僕は右手で肉じゃがを掴んだ箸を握りしめていた。 …僕はまだ…死ねない。 そのまま長門さんの腕を掴む。 長門さんは僕が何をしようとしたのか分かったのか飛び退こうとしたが…。 「遅い!」 左手で放つ0距離攻撃。 赤い光に包まれ、肉じゃがは静かに消滅……え? …。 …。 長門さんは僕がそうすると最初から分かっていたかのようにかわしていた…。 「あなたがそうするのは分かっていた。」 次の瞬間僕の口に肉じゃがが入った…。 …。 …。 ズキューン …。 …。 バタッ …。 …。 …。 ~ここより長門サイド~ …。 …。 私が肉じゃがを古泉一樹の口に入れると彼は静かに倒れた。 「お礼完了。」 私の作った肉じゃが…成体ミノタウロス5体分の一番美味しい所を使って作った肉じゃが。 美味しさのあまり気絶するのも無理は無い。 でももう少し食べてもらいたかった…。 「……う…。」 古泉一樹? …。 …。 「…な…長門さん…。」 「なに?」 「…もう一口…食べさせて…もらえませんか…?」 彼は震えながら言った。 「…量が少なかったらしく…逝けませんでした…。」 私の肉じゃがをもっと食べたいと言ってくれている。 古泉一樹…傷だらけになりながら私を助けてくれた…。 そして私の肉じゃがをもう一度食べたいと…。 何…この感情は…エラー? でも…嫌じゃない…。 「…このままでは…生き殺しです…せめて…ひと思いに…。」 私は頷く。 「あ…ありがとう…ございます…。」 そして彼の口に肉じゃがを入れた。 …。 …。 バタッ …。 …。 気絶した。 …。 …。 古泉一樹…みんな…ありがとう。 …。 …。 …。 彼らが目を覚ますのは3日後となる。 …。 …。 …おしまい。
https://w.atwiki.jp/haruhi_vip2/pages/5276.html
高校卒業から10年程が経過した、最近高校時代の夢を良く見る、ひょっとしたら今も夢を見ているのかもしれない 今の俺はただ生きている、無意味な時間を過ごし、一人寂しく生きている 高校時代の友人とはもう連絡を取っていないしあいつに集められた3人ももういない 10年前の情報爆発が原因で皆散り散りになった ニヤケ面したやつ、名前なんだったっけ? そいつはわけのわからない組織と共に行方をくらませた マイエンジェルなどと呼んでいたあの人は、自分の時代へ 本が好きだったあいつは、親元へ還っちまった そもそもの原因はあいつとくだらない事で喧嘩しちまったことだ それは今でも後悔している、あの時の俺はどうかしていたんだ もしも戻れるならあの頃に戻りたいものだ そう考えながら、俺は急激な眠気に襲われ眠りについた 『今回も前回と同じ思考に陥ってくれてるようだね さぁ君の願い叶えてあげよう、あの頃に戻してあげるよ でもその前に少しの間眠ってもらうよ 再び始めよう、無限に続く世界を!! 今回も主人公はジョン・スミス…君だ そして、ヒロインは……』 またこの夢か……。そういえばあいつとの喧嘩、本当にくだらないことだったのか? そうだ、その喧嘩はいつもより酷かったような……、喧嘩した理由なんだっけ? 思い出せないなんでだ、そもそもここはどこだ? それに今はいつだ?細かいことを何も思い出せないどうなってるんだ…… 『おい人間』 そうだ、こんな時は!……誰だったっけ?確かこんな時誰か頼りにしていた奴がいたはずだ 『人間!聞こえていないのか人間!!』 うるさい!俺は今考え事しているんだ!!黙ってろ と言おうとして振り向いたのはいいが誰もいない その代わり一冊の本があった 『ようやく気付いたな人間』 本から声が聞こえる……まさか、ありえるわけ……いやこんなことをしでかすやつを一人知っている 知っているが思い出せない、やれやれ俺はどうしてしまったのかね 『良く聞け人間、汝は邪神により汝自身の未来を閉ざされている 妾はその邪神を追ってここにきた、そして今汝の精神に語りかけておる』 邪神?なんのこった、わけわからんことを並べ立てやがって イライラしていたそのときだ、銀色の髪と黒い瞳をした少女がそこに立っていた 『……あなたは誰?彼に危害を加えるのなら、あなたを敵性と判断し、情報連結を解除する』 今度は誰だ?わからない、でも懐かしい感じがする 『ほう奴らの人形か、暫く見ないと思っていたらこの星に来ていたのか まぁよい二人とも良く聞け 邪神が汝等の運命に介入し汝等の未来を狂わせている もしも汝が邪神と向き合い、戦う意志を持ったならば聖句を唱えよ! 聖句は今汝の心に刻み込んだ、この聖句が妾と妾の伴侶に聞こえた時必ず汝の力となることを約束する 人形、こやつをそれまで守ってやってくれ。こやつの精神は見ての通りくたびれておる こやつはこの10年間を何億と言う回数を繰り返しておる、普通の人間なら発狂してもおかしくない状態だ 妾たちがそちらの世界にいけるようになるまで頼んだぞ』 『……了解した』 あぁもう何がなんだかわからん、誰か説明してくれ 何で俺はここにいる、お前らは誰だ? 『落ち着け人間、そのうちわかる だが勇気を忘れるな!!』 勇気とか何だよ、俺に何をさせようってんだ! 『汝は何もしなくていい、ただ戦う意志を強く持て、それだけでいい』 何と戦えって言うんだ! 『ナ■■■■■■■■■、検閲かふむ……まぁいい、何度も言うが戦う意志を強く持て。また会おう人間!』 ちょっと待て!! 『あなた達は私が守る』 お前もだ、誰なんだお前は! 『……直ぐに思い出す……また図書館に……』 図書館?何のことだ、おい待ってくれ! 「……ョン!キョン!」 「ぅん……」 「ちょっとキョン!!」 「涼宮さん、彼も疲れているのですよ、もう少し寝かせて差し上げてはいかがですか?」 「仕方ないわね……、キョンも起きないし、今日はもう解散!あたしはキョンが起きるまで待つから皆は帰っていいわ」 「わかりましたではまた」 「それじゃ私着替えますね」 「……また明日……朝比奈みくるボソボソ」 「長門さん?わかりました」 「……コク」 「長門さん、僕も行ったほうが良いですか?」 「……コク……ただし彼と涼宮ハルヒには内密に」 -古泉サイド- さて、長門さんが僕たちだけを呼び出すなんて何事でしょうか 本来は彼の視点で勧めるべきところですが、彼はまだ就寝中です 午後6時僕と朝比奈さんはここ、長門さん宅に来て用件を聞いています 「本日午後3時21分48秒に彼の精神に二つの存在を確認 うち一つは午後3時34分6秒に情報連結を解除、正体は不明 残る一つは午後4時32分28秒に接触、何ものかの意思であると確認 情報統合思念体とも天蓋領域とも違う存在、但し有機生命体で言う女性に該当することが判明 彼女は私に言った 彼はこの10年邪神の力でループしている、回数は不明但し億を越えている 邪神が涼宮ハルヒの力を使い、運命の輪に閉じ込めている ループの記憶は消されているものの、彼の深層意識と精神は疲弊しきっている このまま行けば彼は自らの命を断つ可能性が高い 邪神の目的は恐らく彼の死を原因とする涼宮ハルヒの負の情報爆発 現在情報統合思念体に邪神の正体を問い合わせ中 情報統合思念体は未来人・超能力者と協力し彼の保全を最優先することを決めた あなたたちにも指示が行くと思う、しかし私という固体はあなたたちに友人として協力 を要請したいと思っている」 邪神ですか、それは神人とはまったくの別物なのですか? 「神人は涼宮ハルヒが生み出したエネルギー生命体、邪神は起源も規模も不明 今情報統合思念体から連絡があった、邪神の名は…エラー言語化できない、なぜ? 起源……エラー……規模……エラー……目的……エラー 機能検索……何者かが私に検閲プログラムを導入、解除不能 邪神に関する全てにプロテクトがかかっている、情報統合思念体に解除要請…… エラー、情報統合思念体にアクセスできない ただし、情報操作・私と言う固体の能力について制限は無い」 どういうことでしょう、邪神に関する項目のみに検閲、さらに情報統合思念体とアクセスができない となると、僕たちは推測に推測を重ね今後の対策を練らなければならないようですね 「い、今未来から私に指示が来ました。TFEI端末・超能力者と協力しキョンくんを死なせないようにという事です 長門さんと同じ、邪神については禁則がかかっています…… TPDDに制限がかかって、空間移動はできますが時間移動ができません…… あっ、ふえぇぇ、未来との通信もできなくなりましたぁ!」 困ったことになりましたね、まず整理しましょう 長門さんが得た情報、女性と思われる方によると 邪神が涼宮さんに情報爆発を起こさせ何かをさせようとしていること それと末端の僕たちを孤立させようとしていること、機関は大丈夫でしょうか 念のため確認してみましょうか もしもし、古泉です。はい……はい……わかりました どうやら機関とも連絡が取れなくなりました、本当に孤立させることが目的のようですね ではこうしましょう、これから毎日団活後長門さん宅に集合 各エージェントと情報交換し、情報をまとめましょう それでいいですか? 「……構わない、彼と涼宮ハルヒは私と言う固体にとって大切な人、危害を加えるものは 全て敵性と判断」 「わかりました、私もこの時間平面にいる駐在員と連携して情報を集めます!」 では今日の所は解散という事で -キョンサイド- うぅん…… 「あっ、やっと起きた、さぁ帰るわよ!」 ハル…ヒ?あれ? 「あんた泣いてるの?」 言われて気付いた、何で俺泣いてんだ? すまんハルヒ! そう言って俺はハルヒを抱きしめた 「ちょ、ちょっとキョン!……もう……」 すまん、しばらくこうさせてくれ どれくらい、そうしていたのかわからなかった それから俺はぽつぽつと語りだした なぁハルヒ、もし俺がいなくなったらどうする? 「そうねぇ、世界の果て、違うわね……そう宇宙の果てまでおっかけて連れ戻すわ あんたはSOS団の団員その1で雑用係だからね」 じゃあもし俺が死んだらどうする? 「バカなこと言わないで、今度そんなこと言ったら死刑!」 おい、それじゃ死ねと言ってるようなもんじゃないか 「そうよ、あんたはあたしの……なんでもない……」 そうかい、やれやれだな 「ところでキョン、そろそろ放してくれない?」 良く見たらハルヒは顔を真っ赤にして口を尖らせていた あぁすまん 「さっき寝ながら泣いてたけど、どんな夢見てたの?」 さぁな、よくは憶えてない、けど大切なもの全部無くして絶望に明け暮れていたような なんというかだな、そんな感じの夢だ それでなんだったかな、もう一度やり直したいって考えてたら 声が聞こえて、その後は憶えてないなぁ 「ふぅん」 最近良く見るんだよな、この夢 「何かの暗示かもね、あたしでよかったらいつでも相談に乗るわよ あっ、勘違いしないでよ、あたしは団長なんだから団員のメンタル面も把握する必要が あるだけだから!」 へいへい頼りにさせてもらいますよ、団長さん じゃあ、早速だが聞いてくれハルヒ 何でこんな事を思ったんだろう、俺は目の前にいるハルヒが無性に愛しく思えた いや、以前からわかっていたはずだ、ハルヒの気持ちも、俺自身の気持ちも この1年半という時間でどれだけ俺はハルヒと二人きりになれたのだろう よくこいつにはドキっとさせられることもあったっけ 文化祭の後なんかもそうだ、勝手にこれってデートか?と勘違いして古泉たちが来て落胆したっけ 今思えばこいつと二人きりで、こうやって話した時間って少なかったんじゃないか? でも今はこいつと、ハルヒと二人きりでいたい、いやもっと二人の時間が欲しい 俺らしくないが、こんな事考えてたら理性が欲に変わっちまった ハルヒが欲しいという欲にな だからこの日、俺はハルヒに自分の想いを全てぶつけた 「遅いのよ……バカ……あたしだって、あんたの事好きなんだから……」 こうして俺たちは彼氏彼女という関係になった まぁ周りからはやっとかと言う反応しか返ってこなかったがな 文芸部室に行くと、いつの間に準備されていたのか、俺とハルヒを祝福する会が開かれた ハルヒはというと、顔を真っ赤にしてそっぽ向いちまった 俺は俺で、気色悪いニヤケ面120%増で顔が近い古泉を適当にあしらいつつ、 笑顔120%増の朝比奈さんのお茶を啜る、長門はいつもと比べ少し笑顔な気がする 他にも鶴谷さん、国木田もこの会に出席してくれた 谷口もいたような気がするが気のせいとということにしておこう そしてメインの鍋パーティーだ、これもお馴染みになってきたな ん?今が何時かだって?2年の11月の始めだ そしてどっから情報を得たのか、俺とハルヒが付き合いだして二日後、新聞部の校内新聞号外により俺たちのことが報じられた ハルヒよこれもお前の無意識の仕業なのか? さらに弁当を忘れてきた俺は、仕方なく学食で飯を食うことにした、もちろんハルヒと一緒にな でここでも事件だ、新聞部に見つかっちまった…… 馴れ初めだとか、どっちが告白しただとか、根掘り葉掘り聞かれた ハルヒは紅茶をこぼすし、大変だったよこの日の昼飯はな この学校でハルヒを知らないものはまずいないほど有名だからな 全校生徒の興味を引いたんだろうさ 男子生徒の目が痛かった気もするが俺は気にしない さらに週明け、バカップルの日常と称して校内新聞に俺たちの記事が掲載された はぁ……まったくやれやれだ ん?週末は何をしたのかって?SOS団で不思議探索だ 勘違いするな、班分けでデートなどしていない この日班分けで当たったのは午前は古泉と午後は長門と朝比奈さんだ、ハルヒとは当たらなかった 何?もう一日はどうしたのかって?それは聞くな、いや聞かないでくれ頼むから…… ハルヒとのこんな日常がずっと続くんだなと、このとき何の疑いも持たなかった -古泉サイド- さて、彼には悪いですがここでまた僕にバトンタッチです 長門さんに呼ばれた次の日、僕は森さん、新川さんと会い情報交換をしました 現在のところ目新しい情報はありませんでしたが 機関との連絡は森さんを経由と、今まで通り動けという命令を受けました つまり、SOS団のメンバーと協力しろということでしょう 他の方たちは新しい情報は……現状ではあまり期待できませんね この日は至って平和でした、団活終了後長門さん宅に集合し現状報告・情報交換をしました 朝比奈さんは、未来との連絡も取れず時間移動不可の状態、駐在員のお偉方に禁則解除してもらおうとしましたが、ダメだったそうです なにせそのお偉方も同じ禁則を受けていたからです 長門さんも他のTFEI端末と接触したそうですが、全員同じ状況でした 全員と必要な情報を共有したそうで、何かわかったらすぐに僕たちに連絡するとのことです しかし驚きました、あの日僕たちが帰った後、彼と涼宮さんがお互いの想いを伝え合っていたとは これで僕のアルバイトも減るというものです なんにせよおめでとうございます、あなたたちの幸せは僕たちが守って差し上げますよ 「顔が近いんだよお前は!!」 んっふ、そんなに照れなくてもいいじゃないですかキョンさん 僕はただ祝福したいだけですよ、この話を聞いてすぐに準備しましたよ 彼と涼宮さんには指定時刻まで部室には来ないようにしていただき その間に彼の友人二人と鶴谷さんをお呼びし盛大に祝福させていただきました 涼宮さんは団長机で顔を真っ赤にしてましたね、キョンさんはいつもより少しニヤケてましたよ そして週末の団活ですが、午前中は彼と一緒になりました そこで彼にこんな相談をされました 毎日が既視感の連続であること、既視感の強さにより眠れない日があること 変な夢を良く見ること、内容までは覚えていないそうです なるほど、深層意識下にある彼の記憶ですね。これが彼のストレスとなって…… 僕はこう彼にアドバイスしました、あまり気にせずゆっくり休んだ方が良いと 午後の班分けで長門さんと一緒になる場合、僕からそのことを話しておく事を伝えました 結局、午後は僕と涼宮さんの組み合わせになりましたがね 団活終了後はもちろん集合しました この件を長門さんに伝え、今後どうするかを決めました 彼は彼で、朝比奈さんに心配をかけたくなかったのでしょう。 長門さんには相談しなかったようです なるべく彼にループしていることを悟られないようにすることで、一致しその日は解散となりました しかし週明けのあの校内新聞思い出しただけでも笑ってしまいます 馴れ初めや告白、イロイロ書かれていました 見事なほどバカップルでしたね、こんな彼らを守るそう決めた僕たちはこの後目立った情報も無く 邪神と呼ばれる謎の敵も動きを見せませんでした それから約1年が経過しました 2ヶ月ほど前からでしょうか、いえ夏休みの終わりごろからですね、彼の様子がおかしくなり始めたのは 自傷行為を起こすことが増え、精神的にも不安定になっていったのです 恐らく、以前話していた既視感が原因でしょう このままでは危険と思った僕は、彼を長門さん宅へ連れて行くことにしました 誘拐と言っても過言ではないくらいの勢いでね、もちろんご家族の了承は得ています ここで彼に全てを話しました、僕たちの置かれている状況、あなたが何度もこの10年間をループしていること 話し終えた後彼は少しずつ落ち着きを取り戻していました ただ、何故もっと早く教えてくれなかったんだと思っていることでしょう 落ち着きを取り戻した彼は、僕たちにもう自傷行為はしないと約束してくれました それなら涼宮さんに連絡をし、そう言ってあげて欲しいとお願いしました ですが彼は、今自分は涼宮さんに合わせる顔もかけるべき言葉もないと拒否しました この日の夜彼と涼宮さんがこの世界から消えました、正確には閉鎖空間へとシフトしてしまったのです 無事彼と涼宮さんは閉鎖空間から帰還しましたが、その後彼らは別れてしまった とこれはループの話しです さてそろそろ彼に語ってもらいましょうか、彼がどんな選択をし、どんな未来を勝ち取るのか -キョンサイド- 俺は今夢を見ている、それも毎晩毎晩同じ夢を、内容はこうだ 男のような女のような、それでいて全身黒いオーラのようなものを纏った奴に俺は追われている どこまでもどこまでも逃げる、逃げ続けた だがそいつは、俺がどれだけ逃げようと、気が付けば正面に立っている 追い詰められた俺は、こいつに腕を引きちぎられ、足を押しつぶされ 最後ははらわたを抉られ、頭を潰され、元の状態に戻されまた俺は逃げる これを何十回何百回と繰り返す事になる 最後は俺を襲う奴とは違う何かが目の前に現れ、光に包まれ目が覚める これが春先から見る俺の悪夢だ ハルヒと付き合いだして約1年が経過し、俺たちは3年に進級した 朝比奈さんは卒業後近くの私大に入学した、やはりハルヒ監視の任務がまだ続いているのだろう 3年になってからと言うもの俺は毎晩悪夢にうなされている さらに既視感も1年前と比べ日を追うごとに強烈になっていく 夏休みが終わり二学期の1週目から俺は学校に行かなくなった 夏休みの終わる頃には、もうこの悪夢と既視感に耐えられなくなり、寝ることさえ辛くなっていた そんな中2ヶ月が経過し11月になった、本来なら大学の受験勉強をしなければならない大事な時期だ SOS団のみんなはよくしてくれる、特にハルヒは毎日来てくれる 始めこそハルヒのノートを写すなどで勉強はしていたが、だんだんそれも億劫になっていく そしてこの2週間生きる気力を失い始めた俺は自傷行為を始めた そう自殺するためだ、未練はある、それでも現状から逃げ出せるのなら 行動に移そうとした時に限ってハルヒ達が俺の部屋に来た 「キョン!」 「何をやっているんですあなたは!!」 「キョンくん、ダメですよぉ!」 「長門さん、僕が押さえている間にナイフを取り上げてください!」 「……了解した……」 放せ古泉!頼む、頼むよ逝かせてくれ!! 渇いた音が響いた、俺の頬がじわじわと熱くなる 俺に平手打ちをした張本人であるハルヒが泣いている 「バカ!何やってんの! またあたしに、独りでいろって言うの! そりゃ、今は有希もみくるちゃんも古泉君もいるわ でもそれはキョン、あんたがいたからじゃない! あんたがいたから大切な友達を作れたの! だからあんたがいなきゃ、意味無いんだから!! ねぇ、あたしを……独りにしないでよ……キョン……」 そういうとハルヒは俺の部屋から出て行った ……ハルヒ…… 「キョンくん、涼宮さんを追いかけてください!」 朝比奈さん、今の俺にそんな資格ありませんよ 渇いた音が響き再び俺の頬が熱くなる、今度は朝比奈さんに叩かれたようだ 「私今のようなあなたを見たくないです! 涼宮さんを追いかけてください!」 …… 「どうして黙っているんです!どうして動いてくれないんです! どうしたら涼宮さんを追いかけてくれるんですか?」 ……朝比奈さんまで泣かないでください、今の俺には…… 「追いかけてください! 私の好きなキョンくんは、そんな意気地なしじゃないはずです 私の一番大好きな人は、こんな弱虫じゃない!!」 ……すみません朝比奈さん……でも俺は…… 「うぅ…ばかぁ!!」 朝比奈さんも俺の部屋から出て行ってしまった その直後電話が鳴り出した、どうやら古泉の電話のようだ 閉鎖空間か……すまん古泉…… 「はい古泉です、わかりました。 キョンさん、僕は少なからずあなたという人に嫉妬を覚えていました ですがそれも勘違いだったようです、失礼ですが僕はあなたを見損ないましたよ しかしそれでも、それでも僕はあなたが立ち直ってくれる事を信じています またあなたとオセロができることを、楽しみにしています。それでは」 古泉もいっちまったか… 長門すまん、一人にしてくれないか…… 「……落ち着いたら私の部屋に来て……話したいことがある キョン……生きて、ハルヒのためにも、あなた自身のためにも」 ……みんなすまん…… -ハルヒサイド- キョン……あんたどうしちゃったのよ 死ぬだなんて考えないでよ、あたしを独りにしないで もう独りはいやだよ、お願いだから生きて 気が付いたら公園にいた、公園のブランコであたしは泣き続けていた どれくらい時間が経ったのかわからないけど、あたりは暗くなっていた 誰かが近づいてくる、キョンなのかな…… そんな淡い期待は顔をあげた瞬間に裏切られた、けど嬉しかった、反面そこにキョンがいなかったことが悲しかった 有希、みくるちゃん、古泉君があたしを探してこの公園に来てくれた みくるちゃんも泣いていたのかな、目が赤いよ 「涼宮さん、キョンくんきっと立ち直ってくれます だから、キョンくんを支えてあげてください」 「僕からもお願いします、今の彼を支えられるのはあなただけです」 「……私からもお願いする」 私じゃ力になってあげられない、いつからこんな弱くなったのかな 「いいえ涼宮さん、あなただからこそ彼の力になってあげられるのです 僕たちでは、彼の心の奥底にある何かに触れることができません」 「そうなんです、私たちじゃ涼宮さんほどの力になってあげられません」 ダメよ、こんな弱い私じゃキョンの力になれない 渇いた音がして私の頬が熱くなった え? 「なんで、なんでキョンくんも涼宮さんもお互いを避けるんですか? 私の知ってる二人はとても優しくて、どんな困難も乗り越えられる強さも持ってるじゃないですか」 「そうです、あなたの彼の前でだけ見せるあの笑顔があれば、きっと彼も生きる気力を取り戻してくれるはずです」 「それは私たちにはできない、あなたの笑顔こそ彼の心の奥底にある恐怖を払う力になるはず、私はそう信じる」 「そうですよぅ、今のキョンくんも涼宮さんもお互いを必要としてるのに、逃げちゃだめです!」 うぅ……ごめん、ごめんねみんな。 そうよね、あたしがしっかりしなきゃ、あいつはもっと苦しいんだよね あたしと付き合いだしてから、ずっと変な感覚に苦しんできたんだもんね 悪夢もずっと見続けて、独り苦しんでるあいつを支えてあげなきゃ! そう決意できた時、あたしはまた泣いた、泣き続けた、涙が枯れるんじゃないかってくらいに そんなあたしを受け止めてくれた、ありがとうあたしの大切な友達 あたしもあいつと一緒に、あいつの苦しみと戦うんだ! だからあいつが元気になるまであたしは眠らない あたしをこれだけ悩ませたんだから、元気になったら罰金だからね! -キョンサイド- それから2週間こんな俺をハルヒは励ましてくれる、しかしどうにも生きる気力が沸かない ハルヒもまた眠っていないらしい、目の下にくまが出来ている バカ野郎…俺なんかのために綺麗な顔にくま作ってんじゃねぇよ…… 結局この2週間で俺が取った行動は、自傷行為を続けハルヒに叩かれる毎日を送ることだった 全部未遂に終わったがな、これもハルヒの俺に生きて欲しいという想いが起したのだろう 長門に話しがあるから部屋に来いと言われていたが、とてもそんな気分にはなれなかった 次の日の朝、古泉が所属する機関に俺は無理矢理連れ出された ほとんど誘拐だったな、親と妹には話をしていたらしく、何も言わなかった 着いた先は長門の家だ、マンションの入り口で長門、朝比奈さん、古泉が待っていた そこで俺は全てを聞かされた、俺の既視感の原因、そして俺だけが去年からの10年間ループしているのだという もっと早く教えて欲しかった、だが知ったところでどうしようもなかったのも事実だ このことを知れただけでも気が楽になり、自傷行為はやめることを約束した だがハルヒには合わす顔もなければかけてやる言葉も無いと、ハルヒへの連絡はしなかった 家に帰され久しぶりに寝れそうだと思い布団に入った 気が付くと閉鎖空間だ……、俺が原因で発生した閉鎖空間…… 北高か…… そう呟いた時赤い球が俺に近づいてきた、古泉だ 「やぁ、少しは眠れましたか?」 多分な 「既にお気づきの通り、ここは閉鎖空間です。2年前のあの空間と同じタイプのね」 そうかい 「僕たちからの応援の言葉です、邪神に負けないで自身を強くもってください、あなたなら必ず未来を勝ち取れます」 …… 「おっと時間のようです、あなたが未来を勝ち取りこちらの世界に回帰することを祈っていますよ」 …… 古泉が消えた、俺はどうすりゃいい…… しかたない……部室に行ってみるか ドアをノックする返事が無いがまぁいい開けよう 「キョン!」 ハルヒ……すまん……心配掛けた 「バカ!あたしがどれだけ心配したと思ってんのよ!バカバカバカバカバカ!」 ホント……すまん…… そういってハルヒを抱きしめてやろうと思った その時今までに無い強烈な既視感に襲われた 『そいつは本物じゃない、本物は後ろにいる 後ろだ後ろにいる者こそ本物だ!』 何かが俺に語りかけてきた、男の声だ、だが聞き覚えが無い それでも目の前のハルヒを受け入れてはいけない、そう思い後ろを見た 確かにハルヒがいた 「キョン!遅い!あたしを心配させておいてただじゃ済まないわ! そっちの奴を選んだら死刑だからね!!」 ハルヒが二人……さっきの声を信じるならこっちが本物か しかし……そういえば目の前のハルヒはくまが無い 後ろのハルヒにはくまがある、それにさっきまで泣いてたんだろう目が腫れてる…… それに後ろのハルヒには100万Wの笑顔があるじゃないか!! それと比べて目の前のこいつはなんだ、何をニヤニヤしてやがる気持ち悪い、100W、いや1Wのかけらもないただのニヤケ面だ そうだ、迷うこと無い後ろのハルヒこそ本物だ! なら目の前のこいつに言うべきことは一つ お前は誰だ? 「おや、とうとうばれてしまったようだね、さすが人間だ いつもの事だけど、人間の絆ってやつには驚かされるよ」 男と女が入り混じったような声でそういうと目の前のハルヒは、いや目の前の化け物は正体を現した 漆黒の化け物?そうかこいつが古泉が言ってた邪神か、なんでだろうな足がすくんで動けない 「その通り、さて邪魔が入ったし。まずは後ろの小娘から殺そうかな」 そうだこいつだ、俺の夢に出てきては俺を何度も何度も生かさず殺さずを繰り返してくれた奴は! 頼む、動いてくれ俺の足!! くそ動かない、ならせめてハルヒ伝えるんだ、あいつらがこの閉鎖空間に入ってこれるように祈ってくれと ハルヒ!! ハルヒ良く聞け、長門、朝比奈さん、古泉をこの世界にも来るよう考えてくれ 「え?キョン?どういうこと?」 SOS団が揃えば何だってできる!そうだろ? それが夢の世界ならなおさらだ! 「うん、わかった!(有希、みくるちゃん、古泉君来て!!)」 やばいハルヒ!!ぐ…あっ…、動けたと思ったらこれかよ…… 「おっと間違えた、小娘を殺すつもりが君を傷つけてしまったよ」 「キョン!」 ハルヒ俺の事はいい、今はあいつらをこの世界に呼ぶんだ!! 「でも!」 あいつらが来るまで俺は耐えてみせる!だからあいつらが来るよう祈ってくれ!! ハルヒ!!! 「……(みんな早く!!)」 「さて次は、肩を壊してやろうかね。やはり人間の悲鳴はいい、肩の次は背中を破壊してあげよう」 くそっ!まだかよ、このままじゃさすがに持たんぞ…… 「ふふふ、背中を潰すのは後にして足を破壊してあげるよ人間!!」 があああああああああああああ!! ここで俺は倒れちまったみたいだハルヒが泣きながら俺を抱きしめてくれてる ハルヒ…… 「キョン!キョン!!」 ハルヒ聞いてくれ、俺さバカだからお前を悲しませてばっかだったな 「ばか、いいわよ今はそんなこと!」 強く祈ってくれあいつらがここに来ることを!! 「うん、うん」 「さぁって次は内臓を抉ってあげよう どうだい、夢と同じ事をされる気分は まぁ本当なら腕を引きちぎってるところだけど、優しい僕は後にしてあげることにしたよ」 そうか、お前か俺にあの悪夢を見せたのは! 「そうさ、君の悲鳴は何度聞いてもいいものだ、これからがお楽しみだ!」 「ふんもっふ!」 ははっ、ホントにきやがったこれで俺たちの勝ちだ! 「すみません、遅くなりました」 「ふえぇぇぇ、キョンくん大丈夫ですか、涼宮さんも!」 「……私が彼の治療をするその間邪神を」 「みんな、本当に来てくれた、キョンの言った通りに、ありがとみんな!」 「さぁ一度退避しましょう」 「おや、逃げるのかい?まぁいいだろう、じゃあ12時間猶予をあげようその間に態勢を整えるといい 僕は高みの見物をさせてもらうよ」 保健室に逃げた俺は長門に治療してもらい、そのまま寝ちまったらしい それで変な夢を見た 「人間、おい人間!!」 またこの夢か…、どうせまた本が喋っているのだろう 「その通りだ人間、どうやら妾のこと憶えていたようだな どうだ汝はあの邪神と戦えるか?」 さぁな、さっきはハルヒを守るって一心でやっと動けたからな 本音言うと逃げたしたいよ…・・・ 「それは仕方ない、普通の人間であれば彼奴の瘴気で全員発狂してもおかしくない これも一重にあの小娘のおかげだろう」 なぁ俺はどうすればいい? 「それは汝が決めることだ、戦う意志があれば必ず勝てるとだけ言っておこう」 そうかい、まったくどいつもこいつも、俺には秘密主義なんだな 「そういうな人間、そうだ以前汝に刻んだ聖句、憶えているか?」 聖句?なんだそれ 「やはり憶えておらんか、まぁ戦う意志を持ったとき、汝の心に浮かび上がるだろう」 そんなもんでいいのか? 「うむ、なんの問題もない」 そうかいやれやれだなまったく 「さて、彼奴に気付かれるわけにはいかんのでコレで失礼するが 意志を強く持て、必ず勝てる。」 あぁありがとよ…… 「…ョン、キョン」 あぁハルヒか、どうした? 「もうすぐ、12時間たつわ、さっきの奴また来るのよね?」 多分な 戦う意志か、大丈夫なんだろうか、あれを目の当たりにして俺は戦えるのか? くそ、思い出しただけで震えがとまらない…… 「お目覚めですね、どうですか動けますか」 大丈夫だ……と思う 「あっ、キョンくん!よかった」 「……もうすぐ12時間……くる!」 「やぁ揃っているようだね」 うっ……体が震える……汗もとまらない 「ちょっとキョン、大丈夫」 「涼宮さん、彼と朝比奈さんを連れて下がってください。ここは僕と長門さんで食い止めます」 俺も戦うぞ古泉 「目の前の敵に怯えているようでは足手まといです、下がってください 朝比奈さん、二人がいう事を聞かないようなら、あなたの能力で移動してください」 勝手なことを言うな、俺のどこが怯えているっていうんだ 「自分でもわかっているはずです 先程からぶるぶる震えて、冷や汗を全身に掻いてるあなたに何ができるんです」 くっ…… 言い返せない、でもこのままじゃ俺は…… 「キョンくん、涼宮さん行きましょう 私たちがいては邪魔になるだけですから……」 わかりました…… 「有希、みくるちゃん、古泉君……わかったわ。さぁキョン行くわよ!」 すまん、長門、古泉 「……ここは私たちが相手になる」 「ふふふ、実はまだ君たちの相手をする準備ができていないんだ」 「どういうことでしょう?」 「直にわかるさ、その間こいつらの相手をしてもらおうか」 なんだよこの音……何かが大地を揺らし、なおかつ這いずるかのような音 「朝比奈さん、彼らを連れて今すぐ離れてください!」 「わ、わかりました!二人とも目を瞑って」 くそ、結局逃げることしか出来ないのかよ俺は!! 「わかったわ」 「いきます!」 この感覚……時間遡行か! 「もういいですよ」 朝比奈さん、あれからどれくらい経ちましたか? 「ここは閉鎖空間の旧校舎、あれからわずかな時間しか経過していません」 そうですか、古泉たちは? 「グラウンドにいます」 「みくるちゃんすごいじゃない! 何?一瞬で部室棟に移動したの? すごいわみくるちゃん!」 「一瞬でというより、わずかな時間遡行です」 「もしかしてみくるちゃん未来人?」 「ふふ、涼宮さんの夢ならなんでもありですからね」 「そういえばこれはあたしの夢だったわね」 こうしてみると、あの朝比奈さん(大)の面影が出てきてるな これから一気に成長するのだろうな朝比奈さんは 『いいのかい?仲間に戦わせて自分は何もしなくて』 誰だ! 『誰だっていいさ、この空間のわずかな綻びを見つけてね、ちょっとお邪魔させてもらったのさ』 空間の綻び?それはもうすぐこの空間がなくなるって事か? 『そうじゃない、さっき混沌が召喚した時に綻びができてね、それを利用させてもらったのさ それでジョン・スミス、君はどうしたいんだい?』 俺は戦いたい、あいつらだけに戦わせたくない 『じゃあ、勇気を持つことだ どんな恐怖にも負けない勇気をね そして共に詠おう、生命賛歌を』 勇気…… 『私の知り合いにね、後味が悪い、胸糞悪い たったそれだけで正義の味方になった人がいる 君にもあるはずだよ、君だけの正義、君だけの勇気、君だけの愛がね それじゃあ私はそろそろ行くよ、意識を侵入させるだけで精一杯だったからね』 待ってくれ、俺はどうしたらいいんだよ! 『君はもう答えを持っている、自分で答えたじゃないか 戦う意志があるなら後は勇気を持てばいい』 「キョン!」 え?あ、ハルヒ? 「何ボーっとしてんの、部室に行くわよ、ここにいても有希たちの邪魔になるわ」 ダメだハルヒ、俺は戦いたい! そう言い切りかけたとき渇いた音が聞こえた……またハルヒに叩かれたようだ……左の頬が熱く痛い 「今のあんたに何ができるってのよ!震えて、冷や汗掻いて……死にに行くようなモノじゃない! 夢の中であってもあんたに死なれたくない、少しはあたしの気持ちもわかってよ!バカキョン!!」 ……くそ、俺はまだ震えてんのか、この期に及んでまだ…… 爆発音が響き古泉と長門が化け物の攻撃で、俺達のところに飛ばされてきた 古泉!長門!! 「すみません、油断しました。まさかあのような化け物が出てくるとは」 「……私達の戦闘能力だけでは抑え切れなかった……」 「さすがの情報統合思念体対ヒューマノイドインターフェイスも、ダゴンとヒュドラの群れには適わないようだね」 ダゴン?ヒュドラ?なんだそりゃ 「クトゥルーに仕える深きものどもの首領さ、どうだいすごいだろ」 「多勢に無勢です、このままでは」 「さぁよく頑張ったね、しかし人形と能力者一人じゃもう限界だろ? 僕は僕の目的を果たさせてもらうよ」 「え、うっ…あぁ…キョン!なにこれ……頭が痛い……あぁぅっ!……しゃい……にんぐ……とらぺぞ……へどろん…… なにこれ、何なのよいや、こんなのいやいやいやいや 何なのよこれ、こんな世界見たくない、いやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっぁ!!!!」 ハルヒ!落ち着けハルヒ!ダメだ、完全に取り乱してる なんだ、ハルヒに何しやがった、くそこの期に及んでまた足が震えやがる、動けよ俺の足!! 「少し面白い物を見せてあげてるのさ、僕たち邪神の住まう宇宙をね おっと、能力者に人形さん、君たちも動かないでもらおう」 「これは!?動けない!」 「ふえぇぇぇぇ!」 「……私たちの周囲に重力結界が発生、解除不可」 長門、朝比奈さん、古泉! 「勇気を、恐怖に立ち向かう勇気を持ってください」 「キョンくんだけが頼りです」 「……あなたならできる」 「そろそろ出現かな、あぁ出てきた出てきた」 くそ、なんだあれ…、金の箱?違う黒い、結晶体?なんだアレ、形が変わり始めた、なんなんだあれ! 「輝くトラペゾヘドロン、僕はね、あれを破壊したいんだよ。 この娘の力を使えば世界をまるごと改変できるけど それじゃあ面白くない、どうせならこいつを破壊する瞬間を連中に見せてやりたいからね さてそろそろ神人とやらにもご登場願おうか おそらく彼女が出した巨人ならあれに封じられることは無いだろうね」 てめぇ!! 「…………」 ハルヒ、ダメだ意識を失ってる くそっ、くそっ、俺には何にもできないのかよ、震えて黙って見てるしか出来ないのか俺は 今動けるのは俺だけなんだぞ、しっかりしろ!今動かないと絶対後悔するぞ 失わなくて済むモノを失うんだぞ、戦うんだよ俺!そうだ足を動かせ、拳を握り構えろ! うおぉぉぉぉぉ! 黒い化け物に一発、また一発、俺は何度も殴り付けた 「ふふふ、痛いじゃないか、震える体でよく頑張ったね人間。そんなに死にたいのかい?なら望みどおり君から殺してあげるよ!」 うるさい黙れ、死んでたまるか、俺はこいつらと生きるんだ! 生きて現実空間に戻るんだよ!! そう叫んだとき全身が光輝いた、後ろを見ると長門たちの動きを封じていた結界が消滅していた ハルヒはまだ気を失っている、でもさっきより楽になったみたいだよかった そういえば、夢で聖句がどうの言ってたな、なんだったかな 「あれは連中の……そうか、また彼らを愛せるんだね……ふふふ、さぁ人間早く早く、早く喚んでくれたまえ あぁ、楽しみだ楽しみだよ」 なんだこいつ……いや今は聖句だ……なんだったっけ……確か……確か…… 『さぁ人間、唱えよ!未来への路を開く無垢なる翼を汝の手でつかみとれ!!』 ……思い出した!! 「うぅん、キョン?」 ハルヒ、目覚めたかもう少しゆっくりしてろ 「うん……」 憎悪の空よりきたりて!! 正しき怒りを胸に、我らは魔を断つ剣を執る! 汝、無垢なる刃デモンベイン!! ……なんだよ、何も起こらないじゃないか、くそ! 「キョンさん、涼宮さんと一緒に聖句を唱えてはどうでしょう、もしかするとそういうものなのかもしれません」 そういうもんなのか? 「まぁこういのはお約束ってことで」 そうだな、だが顔が近いぞ古泉 ハルヒ、すまんが今のを一緒に頼む 「さっきのアレをするの?」 頼む! 「仕方ないわね、いい?一回だけだからね?」 それで十分だ!じゃあ行くぞ! 憎悪の空より来たりて 「正しき怒りを胸に」 「「我らは魔を断つ剣を執る!汝、無垢なる刃デモンベイン!!」」 唱えた瞬間、急に俺とハルヒの体が光り出した そして目の前に五望星が描かれ一際眩い光が放たれたと思ったらそこに誰かが立っていた 「人間、よく戦う勇気を持ち決意をした、後は我らに任せるがよい」 この声、夢に出てきた 「アル!」 「応!!」 「……ふふふ、あははははは、待っていたよ旧神・大十字九郎!!そしてアル・アジフ!!」 「久しぶりだな、ナイアルラトホテップ! 何度目かは忘れちまったが、あんたの企みこれまでだ! それにしてもまだ諦めてなかったんだな、輝くトラペゾへドロンの破壊をよ」 「久しぶりだね大十字九郎、僕が諦めるわけないだろう。 今度は輝くトラペゾヘドロンの衝突による破壊ではなく 人間の力で破壊しようと思ったのさ、まぁ成功する確率は低いけどね さて、もう少し僕の相手をしてもらうよ大十字九郎、6体の人形と遊んでいてもらおう」 「させるかよ、クトゥグア!イタクァ!!」 何だあれ、何もないところから火?氷?いや違う、拳銃だ 「……魔術」 魔術だぁ? 「ちょっとキョン!なんなのアレ!」 わからん、俺が聞きたい。それと、お前はまだ不思議を諦めてなかったのか 「当たり前じゃない!」 あぁわかったわかった、じゃあまた皆で不思議探索しようぜ。 「そうね!」 で、長門よ魔術ってなんだ?手品師みたいなもんか? 「違う、魔術とは魔導書と契約することで己の力とするもの 高位の魔導書になれば、意志を持ち、神を召喚することが可能」 神?この空間に出るアレみたいなもんか? 「違う、恐らくは最高峰の魔術で編み上げる巨神……!? 邪神に関する項目のプロテクトが解除された、原因は不明」 「私もです、邪神に関する禁則が解除されました、TPDDも正常に作動してます」 やれやれどうなってんだ、今回は 「あはは、あんたのその顔久しぶりに見たわ」 そうか? 「うん!」 そうかい 「まったくせっかちだねぇ君たちは、今出したばかりだってのにもう殺しちゃったのか まっ君たち相手に足止めになるとは思ってなかったけどね では能力者と人形の相手はこいつらにやってもらおうか」 今度は何だ……、おおおおおいなんだこいつら、半魚人か 「さぁ邪神の眷属よ、君たちの欲望を人間たちで満たして来るんだ」 『シャアアアアアアア!!』 「させるか!うおおおおおおおお!!」 ……俺は、いや俺たちは息を飲むしかできなかった 恐ろしいまでのスピードで邪神の眷属と言われた半魚人たちを全て倒してしまったからだ 正直何が起こったのかさっぱりわからん…… 「これを持ってここから離れろ!」 これは? 「それは妾のロイガーとツァールを模して作った小剣、そしてこれがバルザイの堰月刀だ 見たところ、小娘二人と汝は武器も無ければ特殊な攻撃能力を持っているわけでもない 人間、それを持ってこの場から離れよ!」 なるほど、自分の身は自分で守れって事か ってあんたたちはどうするんだ? 「ナイアルラトホテップを倒す、あっちの建物の一部に防護結界を張っておく そこに入ったら何があっても出るんじゃない」 わかりました…… 「人間、その小娘大切にするのだぞ。妾たちは彼奴を倒す、その後すぐに汝等を元の空間に戻してやる」 「お互い、苦労しそうな奴に惚れちまったが、頑張れよ」 あぁ、ハイ…… 「さて九郎、さっさと終わらせよう!」 「そうだな 憎悪の空より来たりて」 過去幾億回と繰り返された聖句を高らかに詠みあげる 「正しき怒りを胸に!」 正しき怒りに応え、全ての悪に等しく滅びを与える 「「我らは魔を断つ剣を執る!!汝、無垢なる刃!!」」 最弱にして無敵の剣、汝の名は 「「デモンベイン!!」」 爆ぜる光、闇を照らす聖なる光 五芒星が覇道を往く者の紋章が、灰色の世界に光と色を与える 今度は外が明るくなったなって、なんだありゃ!! 「……鬼械神、機械仕掛けの神、全ての悪を打ち滅ぼす神像、デモンベイン」 え?なんだって? 「で、デモンベインです」 朝比奈さんまで…なんですか、そのデモンベインって 「……説明はあと、あなたは涼宮ハルヒを守るべき 彼らの防護結界は部室に張られている、今は一刻も早く部室に行くべき 私の力ではこれから起こるであろう事象に対処できない」 そうだな そしてまたもや世界が揺れる、それも一度に6箇所で ハルヒ立てるか?ここは危険だ、部室に行くぞ 「わかったわ」 ここは危ないさっさと部室に行こう 防護結界とやらを張ってくれているなら一番安全だ 「それでは僕が追っ手を抑えます 先頭は長門さん、左右にはあなたと朝比奈さん、中央に涼宮さんです」 わかった、朝比奈さんにはこの小剣の片方を渡しておきます そういえば朝比奈さんは武器を持ってないんですか? 「武器の携行は禁止されてますから…… そ、それじゃこの小剣お借りしますね」 ハルヒお前もこれを持っておけ、俺たちだけで対処しきれない時は自分で自分の身を守るんだ 「あんたがあたしを守りなさい、団長命令よ!」 わかったよ、じゃあ部室に急ごう しっかし多いなぁこの半魚人どもは 「後ろもかなりの数です、しかし通常の閉鎖空間と比べ僕の力はかなり上がっています ですから僕に任せてください」 前方は長門が朝倉と同じ攻撃方法で撃退してくれてるが、如何せん数が多すぎる 「……問題ない、しかし0.1%ほど撃ち漏らしている、あなたと朝比奈みくるはそれを撃退して」 分かった バルザイの堰月刀ね、……どうせなら 虎王斬神陸甲剣!! 『グギャアアアアアア』 すげぇ、なんて切れ味だ……しかしグロいな…… 「おやおや、ノリノリですね」 黙れ古泉 「ふえええええ、こっちに来ないでくださぁい!」 朝比奈さんに渡したロイガーの刀身から風刃が巻き起こり、ばったばったと細切れにされていく あの人たちはなんつう危険なもんを…… 「見ろ九郎、ロイガーを持った小娘を、あ奴魔術の才があるぞ」 「そうみたいだな、というかアル」 「なんだ?」 「ロイガーってあんな使い方もできたのか?」 「……まったく汝と言う男は……ロイガーの属性を考えれば当然だ、無論非公式だがな!」 「非公式って……そんなメタ発言して、怒られるだろいろんな所から!」 「問題ない、所詮この作者の妄想だ。」 「いや、そりゃそうだが……」 「それよりも九郎、雑魚共が動き出したぞ!一気に片付けろ!」 「応!!クトゥグア!イタクァ!神獣形態!!」 「さすが大十字九郎だ、ダゴン程度じゃ足止めにもならないか じゃあ次はデウスマキナが相手だ」 なんだ今のは! 「……旧支配者であるクトゥグアとイタクァ」 それってさっきの銃じゃなかったのか? 「……銃は力を制御するための器に過ぎない、今のが真の力」 「しかし本当にすごいですね、大十字九郎さんにアル・アジフさんと言いましたか 僕たちが苦戦したあの化け物を瞬殺とは、恐れ入ります」 「アルアジフ?それってネクロノミコン、オリジナルの名前じゃない!!」 なんだそのネクロノミコンって 「西暦730年ダマスカスにて、狂人アブドゥルアルハザードが書いた魔導書です キョンくん、今後も涼宮さんと一緒にいるなら、これくらい憶えておいた方がいいですよ」 そうですね、って待てよさっきの少女がその魔導書とか言わないよな?さすがに 「それはありえません、いくら強力な魔導書といえど人の姿をするなどとは思えません」 「彼女は間違いなく魔導書アル・アジフ、力ある魔導書は魂を持ち姿を変え、神の模造品を召喚できる」 じゃあ、あのロボットが神の模造品っていうのか? 「あれは神の模造品の模造品、人間のための鬼械神(デウスマキナ)、それがデモンベイン」 さっぱりわからん…… 「あんたの頭じゃ考えるだけ無駄よ」 そうだな、……って遠まわしに馬鹿って言うな 「団長様に心配ばかりかける団員は、バカで十分よバカキョン!」 へいへい、さてこっちも粗方片付いたし、ようやく部室に着いたな 「部室棟に入ってからは、あの半魚人の数も減りましたからね」 それじゃ一息入れますか 「あっ、じゃあお茶煎れますね」 ありがとうございます」 ……しかし、緊張感のかけらもないな…… 「まったく、困ったものです」 顔が近い、よるな気色悪い 「九郎、このままでは埒があかない!アレで往くぞ!」 「応!断鎖術式壱号ティマイオス!弐号クリティアス!!」 「ふぇ!何ですか?何でこんなに時空が!」 「……現在戦闘中のデモンベイン脚部シールドから時空間歪曲を観測 そして元に戻ろうとする時空間の反発力で機動力を得る さらにそのエネルギーをぶつけることで凄まじい破壊力を生み出す」 「アトランティス!」 「「ストライィィク!」」 すっげぇ、延びてきた腕かわしながら、頭上に踵落しを食らわせてさらに銃弾ぶち込んでやがる 「残り5体」 おっ、今度は刀持った奴だ 上とか横からの攻撃をかわしながらよくやるなぁ…… って何だあいつ、脇から腕だしやがった!隠し腕ってやつだな 「光射す世界に汝等暗黒凄まう場所なし! 渇かず飢えず無に還れ!! レムリア!インパクトォォォ!!」 「昇華!!」 「……無限熱量による近接昇華、あれを食らえば一溜まりも無い、後4体」 すっげぇ…… 上からの攻撃に加え、金ピカおきあがりこぼしのレーザーに、黒い弾を撃ってきてる奴か こいつは厄介だな おっと黒い弾の流れ弾…… おいおい、何の冗談だ、人の顔が窓に映ってるぞ 「キョン!幽霊よ幽霊!早くカメラを持ってきなさい、心霊写真として雑誌に投稿するわよ!」 ハルヒ、あれだけは止めとけ、いやホラ何か声みたいなのも聞こえるし 「何言ってるの、こんなチャンス滅多に無いわよ、早くカメラ持ってきなさい!」 あぁハルヒ 「何よ」 言いにくいのだが 「だから何よ」 消えちまったみたいだぞ幽霊 「あぁぁ!もうこのバカキョン!せっかくの不思議だったのにもったいない……」 夢の中なんだし、撮っても仕方ないだろ、第一どうやって現実の世界に持っていくんだ 「それもそうね、夢なら仕方ないか……夢ならね」 何か言ったか? 「別に!」 とこんな問答を繰り返してる間にも外では戦闘が続いていた 「ニトクリスの鏡!」 今度は分身か? 「違う、鏡を使った魔術、現実と虚構の境界をなくし、幻を見せている」 でも長門、何かその幻、鏡みたいに割れてるぞ 「……そう」 「クトゥグア!イタクァ神獣形態!」 至近距離でそれを撃って大丈夫なのかあのロボット 「……直ぐに離れているから問題ない」 みたいだな…… 「本当にすごいですね、見てください」 おぉ、あの二匹地上にいるもう一体の奴を襲ってやがる 「地上の敵は終わったみたいですね」 しかし、空中の敵はどうするんだ? 「シャンタク!」 今度は翼か……なんでもありだなこのロボット…… 緑の方はすばしっこいなぁ、どうやって倒すんだ? おっ、あれはリボルバーだなあれでどうする気だ どこ狙ってるんだ、全然ちが「マッガーレ」 ……気のせいだ気のせいにしておこう 「気のせいではありませんね、残念ながら 弾道が確かに曲がりました」 お前の仕業か古泉 「いいえ、どうやらあれは自動追尾弾のようです 的確に動力部を貫いたようですよ」 とどめはさっきの無限熱量ってやつか 残りはあのデカ物だな 「すごいですねぇ、自動拳銃とリボルバーが融合して長距離砲になりましたよ」 あれで撃ち貫くってわけか 「そのようですね、っ!撃ちましたよ」 一撃かよ…… とまぁこんな感じでこの戦いを見ていたわけだが ほんと、俺の日常ってどこにいったんだろうねぇ誰か教えてくれ 「さぁナイアルラトホテップ、後はあんただけだぜ」 「まったくさすがだよ君たちは、仕方ないここは退こうか」 「この空間から簡単に逃げられると思うな、邪神よ」 「そうだね、ならまずは君たちから死んでもらうよ!」 「荒らぶる螺旋に刻まれた」 「神々の原罪の果ての地で」 「「我らは今聖約を果たす」」 「「その切実なる命の叫びを胸に」」 「「祝福の花に誓って」」 「「我は世界を紡ぐ者也」」 デモンベイン最強にして最凶の必滅奥義 第零封神昇華呪法 輝くトラペゾヘドロン おいおい、あっちの奴あそこにある奴と同じもん出しやがったぞ 「……デモンベインが握るモノが本物、恐らくナイアルラトホテップの封印と同時に消滅する」 「大十字九郎ぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」 「大人しく眠ってな、永遠にな」 「紛い物のトラペゾヘドロンも消えた、今回も終わったな九郎」 「あぁ、さてアル、さっき現実空間に戻してやるとか言ってたがどうすんだ?」 「ふむ……」 「あっ、お前何も考えてないな!そうだろう!」 「これも運命だ諦めよ」 「またそれか!」 「さてな」 なんか、痴話喧嘩みたいなのが聞こえるなぁ 「……オワタ\(^o^)/」 どうした長門? 「……なんでもない」 「お疲れ様ですキョンくん」 あぁ、ありがとうございます 「さてここから出る方法ですが」 ……っゴホン! 「そ、それよりもキョン、説明してくれるんでしょうね!」 な、なんのことだ? 「有希たちの事、あたしに隠れて何をしてたのか、きっちり話してもらうわよ!」 お、おい古泉 「しかし、綺麗ですねデモンベインは」 朝比奈さん? 「ホントですね」 長門! 「……」 ……しっかし、綺麗だなあのデウスマキナってやつは 「そうね、それよりキョンあたしを待たせた罪で罰金だからね! それと今回のことと有希たちのこと、その時にたっぷり説明してもらうから、覚えてなさいよ!!」 ……えぇい、仕方ない!罰金はとりあえずこれでカンベンしといてくれ 「え?んん!」 ハルヒ、また学校でな…… こうして俺は自室で目が醒めた、気分のいい夢だった、夢ではないんだけどそういう事にしておこう さて、ハルヒがこれを夢と認識してくれればいいんだが…… ん?メールか from古泉 お帰りなさい、先の閉鎖空間で涼宮さんの力は失われました それと同時に僕の力もなくなりました これで僕はなんのしがらみなく、あなたたちと付き合えます 僕たちの事は、あなたから涼宮さんに話してあげてください 涼宮さんが力を失った以上、隠す必要もありませんからね 今までありがとうございました、そしてこれからもよろしくお願いします しかし、ようやくあの閉鎖空間から回帰できた理由がわかりました こういうことだったんですね ではまた部室で To古泉 うるさい、黙れ、営業スマイル面を写メで送ってくるな気持ち悪い オセロでボコボコにしてやるからおぼえとけ ……いろいろ迷惑かけたなありがとよ from朝比奈さん キョンくん、お帰りなさい、時空の歪みも消えて未来が固定され、涼宮さんの力もなくなりました これで私の任務も終わりです 大学卒業までこの時間平面に居ていいと許可がおりました 卒業後お別れになっちゃいますけど、それまでよろしくね そういえば、あれが閉鎖空間から帰ってくる方法だったんですね 眠るお姫様を起こすためのキスだなんて、まるで白雪姫ですね! 涼宮さんと幸せになってくださいね To朝比奈さん そうですか、とうとう帰ってしまうんですね。 また部室にも顔を出してください朝比奈さんなら大歓迎です あの時の朝比奈さんのビンタ効きましたよ、ありがとうございました from長門 お帰りなさい 涼宮ハルヒの能力は完全に消失した 情報統合思念体は私に蓄積するエラーこそ自律進化の可能性と認識した。 情報統合思念体はあなた達に感謝している 私という固体もあなたに感謝している 情報統合思念体は私の能力にプロテクトをかける事と、私に蓄積するエラー情報の提供を条件に、この世界で生きていいと言っていた。 また図書館に To長門 そうか良かったな長門、それから今までありがとな また図書館に行こうな さてまだ時間も早いし、もう一回寝るか 今日は月曜、学校に行くのにハルヒとセットでくまなんか作ってたら、谷口あたりに何言われるかわからんからな そしてまたこんな夢をみた、あの閉鎖空間で俺たちを助けてくれた二人組みの夢だ 「よく頑張ったな人間、人間でここまで邪神に立ち向かったのは九郎以外で汝が初めてだ ロイガー・ツァール・バルザイの堰月刀は返してもらうぞ」 「急にあの空間が消え始めた時は焦ったな」 「確かにな、汝一体結界内で何をしたのだ? まぁ、またあ奴が現れたら遠慮なく聖句を唱えよ」 「俺とアルとデモンベインがすぐに駆けつけるぜ」 「あの小娘の力は妾達で消しておいたからその心配はないと思うがな では九郎往くとしようか」 「あぁそうだな。それよりアル、子供が欲しいと思わないか?」 「無茶を言うな、妾達は戦いの日々を送らねばならんのだ それに妾は魔導書だ子供ができるかどうかもわからぬ 仮に子供が出来ても、戦いで汚れた妾達の手では……」 「そうだな……、まぁそん時は姫さんにでも頼んでみるか」 「また覇道の小娘に頼るのか汝は!」 「頼れるのは姫さんとライカさんくらいだからな」 「まぁ、出来た時はそうするしかないが、なるべくは作らないようにするからな九郎」 「あぁわかってるよ」 (と言うより、あんなもので毎日毎日……) 「どうしたアル?顔が赤いぞ」 「うつけ!」 「いつまでも長居してないで往くとするか、じゃあなジョン・スミス、幸せにな」 「さらばだ人間」 まったくこの人たちは……俺の夢に何度も入ってきては、最後に夫婦喧嘩までしていくなんて…… もういないかもしれませんが、ありがとうございました ん?そういえばあの時語りかけてきた奴も、この大十字さんも何でジョンスミスを知っているんだ? こうしてデモンベインと呼ばれていたロボットの手に乗り彼らは去っていった 彼らが離れていくにつれ、俺はいつかハルヒに話そうとした幸せの青い鳥の話を思い出していた 「キョン!キョン!!起きろ!!!」 ん?なんだハルヒか…は?ハルヒ? 「学校行くでしょ?」 あぁ、それよりなんでお前がいるんだ! 「別にいいじゃない」 2ヶ月と1週間ぶりってとこか、それよりハルヒ着替えるから部屋から出てくれんか 「あっ…そ、そうねじゃあリビングで待たせてもらうから、さっさと着替えてくること」 わかったわかった 「すまん、待たせたな」 「いいわよ、それよりあの灰色空間のこと説明してもらえるんでしょうね?」 「わかったよ、いいか・・・」 とまぁハルヒに閉鎖空間のこと、長門や朝比奈さん、古泉のことを教えてやった まぁさすがにアレを目の当たりにすれば、さしものハルヒも信じるしかなかったようだ ハルヒの能力については、ハルヒの機嫌が悪くなったりすると閉鎖空間が発生する程度しか言わなかった これ以上喋ってまた能力を発現されても困るからな ジョン・スミスについて話したのかって?それはまたもう少し後の話しだ さて今日から学校に復帰するわけだが、授業も遅れてるし、出席日数も危うい せめてハルヒと同じ大学に入れるよう勉強しないとな、……そうだな、ハルヒに勉強見てもらうか こうして俺は学校に復帰した 試験結果はハルヒ教諭のおかげでそれなりの結果だった だが出席日数が僅かに足りず、3月に補習を受けることで何とか卒業することが出来た SOS団全員で同じ大学に合格し、朝比奈さんが未来に帰るまでの間遊びと学業を共にした。 朝比奈さんが大学を卒業する頃にはもうあの朝比奈さん(大)になっていた 未来に帰ってしばらくしたら、高校生の俺に会うのだろう、白雪姫と星型の黒子を伝えに 俺はと言うと4年の春に就職もきまり、あとは卒業に向けて遊ぶくらいしかやることがなくなっていた せっかくなので暫くアルバイトをすることにした なんのためかって?そりゃ決まってるハルヒとの結婚資金を少しでも稼ぐためだ 今日はSOS団の団活の日だ、朝比奈さんはこれないが、俺たち4人で結構楽しくやっている 長門と古泉はいつのまにか付き合いだしていた そうそう、あの事件結局なんだったのかと言うと 邪神ナイアルラトホテップが仕組んだことだったらしい 何をしたかったのかというと、既に失われた輝くトラペゾヘドロンをハルヒの力で創造し それを破壊することで、アザトースの庭とやらを解放するのが目的だとか 解放したらどうなるのかきいたが長門は答えてくれなかった 知らない方がいいらしい、そうだな知らない方がいいかもしれん 旧神とやらは何だったのかと言うと、邪神ナイアルラトホテップを追っていたらしい あらかじめどこに出現するか分かっていたが、彼らの力だけでは閉鎖空間に入れなかったのだと だから俺とハルヒで聖句を唱えることであの場に顕現できたというのだ さすがはハルヒだ、神様と崇められていただけの事はある 邪神はどうやって入り込んだかと言うと、俺にくっついて入ったらしい でもあの時、俺がハルヒにあいつら呼ぶよう言わなかったら確実に死んでたな俺 もしハルヒが情報爆発を起こしていたら、どうなってたんだろうなこの世界 本物のハルヒが居る場所を教えてくれたあの声に感謝だ でもあの声旧神て呼ばれてた人に声が似てたな できればもう一度会って話しがしたいものだ そういえば、さっきから奥の席が騒がしいがなんだろうか そこにはどこかで見たことのある二人がいた こっちに気付くと、男の方が俺たちのところに来た 「よっ、元気そうじゃねぇか、まっこれからも頑張れよ!」 「九郎、もう行くぞ!」 少女に引っ張られて男は去っていった、あぁそうか彼が大十字九郎さんか あの時はありがとうございました、大十字さん! 聞こえたらしく、手を振っていた 「知り合い?」 とハルヒが聞いてきたので 高校の時世話になった人だと返した 「そう、ならいいのよ。今度会ったらあたしもお礼言わないと」 だがこの後彼らと会うことは無かった 当然だ邪神とやらと戦う彼らに安息の日々は無いのだから さて今日の班分けはっと… 俺とハルヒは色つき、古泉と長門は色無し なぁこの組み合わせなら、Wデートでいいんじゃないか? 「いいですねぇ、僕は賛成ですよ」 「……異議なし」 「古泉君と有希がいいならそれでいいわよ!」 もしもあの時選択を誤っていたら、俺は今頃あの頃に戻りたいと願っていたかもしれない でもあいつの笑顔があれば、あの頃に戻りたいなんて思わない そう、ハルヒの太陽のような笑顔があれば他には何もいらないのさ -Fin- -古泉サイド- と、彼が締めてしまいましたが僕の方でまた少しだけ続けさせてもらいます あの時は驚きました 突然機関の皆さんがいる前で閉鎖空間の入り口が現れたのですから 他の能力者はまったく気付いていない様子でした その時発生していた閉鎖空間と同じ境界でその入り口があったのです もしかしたらと思って、それに触れるとなんなく入れました 僕だけが入れるのでしょうねあの入り口は 入ったら入ったでまた大変でした、能力を使って学校まで行き、そこで長門さん、朝比奈さんと合流しました 一番驚いたのは朝比奈さんです、どうやってきたのかとたずねたら 突然頭にここの空間座標が送られてきたそうで、TPDDを使い侵入したそうです 長門さんもほぼ同様でした 異常事態でしたね、僕だけじゃなく長門さん、朝比奈さんまでこの空間にいるのだから 部室に行くとそこには漆黒の闇を纏ったようなそんな感じの化け物がキョンさんを襲っていました 僕は急ぎ光の球を作りだし化け物に投げつけました 正直驚きました、いつもの20倍の威力でしたからね、それでもこの化け物には通用しなかったのですが…… 化け物が時間をくれるそうなので、一旦保健室に退避して長門さんに彼の治療をしてもらいました 涼宮さんも疲れていたのでしょうね、彼の治療が終わるとすぐに眠ってしまいました 僕たちは外で彼らを起こさないよう対策会議を始めましたが、結局いい案が浮かびませんでした しかしここで、長門さんが以前彼の精神に入ったときにあった女性が、彼に聖句を教えたことを聞かされました この聖句が勝利の鍵であることを確信した我々は彼らを守ることに専念することにしました 結果は重力結界やダゴンと呼ばれた化け物のおかげでさんざんでしたけども 後は皆さん知っての通りです そういえば、あの時部室に直接時空移動すればよかったんですが 残念ながら彼らが張ってくれた結界の影響で、移動できなかったと朝比奈さんが言ってましたね 僕は卒業と同時に長門さんに僕の想いを伝えました ですがこのときは振られましたねやっぱり 長門さんがキョンさんを好きだという事は知っていましたから でも大学2年の時ですか、長門さんから僕にアプローチがありまして そこでようやく僕と長門さんは恋人同士になったわけです 涼宮さんが好きじゃなかったのかって? 確かにそうですが、僕にとって彼女は高嶺の花ですよ あの太陽のような笑顔は僕ではなく、彼に向けられているのですから え?それではどうして長門さんを好きになったのかって?んっふ、禁則事項です そして大学4年になってキョンさんの就職が決定して少ししてから 何かいいバイトが無いかと相談を持ちかけられまして ちょうど機関で人手が足りないからどうか?と答えました 機関は彼に特別恩がありますからね、さて大学卒業後の七夕の日にサプライズを用意しておきましょう これは僕たち機関に所属するもの全員からのお礼ですからね クリスマスに僕たち機関からのクリスマスプレゼントとして、彼らに教えてあげましょう。今からならたっぷり準備期間もありますし 彼は彼でこの七夕にプロポーズするそうです、何でもその時にジョンスミスの話しもするそうですよ んっふ準備のし甲斐がありますよ 実は僕は僕でもう長門さんにプロポーズをしてしまいまして、もちろん答えはYESでしたよ W結婚式なんて涼宮さんがきいたらどんな反応するんでしょうか 実に楽しみです、あぁもちろん長門さんもこの計画知ってますよ。さてこのくらいにしておきましょうか それでは皆さんにも幸せが訪れますように そして僕からの忠告です、あの頃に戻りたいなどと考え邪神に惑わされないでください その邪神はいつどこであなたを狙っているかわかりませんからね それに、未来は悪いことばかりではありません、自分自身でどうにでもなるのです もちろん、どうにもならない事もあります。ですが、そこから自分でどう修正するかで、また未来は大きく変わるのです -TheEnd-